クルマの火災事故は意外に多く、実は国内でも年間約3600件発生しているという。なぜ車両火災は発生してしまうのか? そしてそれを防ぐ手立ては? 10年に一度の高熱予想が続出するいまだからこそ、自動車の火災について考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/日産、写真AC、Newspress UK
自動車火災は1日約10件も発生している!?
「○○道路で自動車が炎上」こんなニュースを耳にした経験は誰にもあるだろう。それもそのはず、なにしろ日本国内だけで1年に3600件の車両火災が発生しているのだ。
そもそもクルマは意外に燃えやすいものである。引火点の低いガソリンが燃料であり、走行中のエンジンや排気系は非常に高温になる。もちろん、自動車メーカーはこうした要素を考慮し、安全性には十分配慮して設計しているのだが、なにごとにも完全はありえない。
車両火災の発生は、事故の衝撃で車体のどこかが損傷し、そこから燃料に引火するだけではなく、駐車していたクルマがいきなり燃え出したという事例もある。
逆に考えると、走行時の事故はともかく“自然発火”はクルマの状態に気を配っていれば防げる可能性も高いということ。
そこで次の項目では、車両火災がなぜ発生してしまったのかをケース別に見ていこう。
どうしてクルマは燃えてしまうのか?
●排気系が原因での出火
マフラーをはじめとする排気系は、エンジン内部で燃焼したガスを排出するため熱くなりやすく、その温度は500℃を超えることもあるという。そして何らかの原因で高温になった排気系に燃料が触れると、それが発火につながる。
こういった火災が発生しないよう、メーカーではエンジン回りの設計段階で安全対策を施している。つまり、すべてが正常であれば排気系が原因での車両火災は発生しない。
しかし、事故や整備不良などの要因で燃料漏れが起こってしまった場合は別。あるいは排気系に繊維類が付着し、これに燃料が浸みて発火するケースも考えられる。実際、車両火災で最も多いのが排気系からの出火だという。
●エンジンルーム内からの出火
排気系だけでなく、回転中のエンジンも高温になる。そのエンジンルーム内に、整備に使ったウエスなどの布類が残っていると、これにオイルや燃料が付着して発火の原因になることがある。
いわゆる電装系に使われているワイヤーも火災の原因となる可能性も無視できない。経年によって劣化したワイヤーの被覆が破れて銅線が露出すると、これがどこかに擦れて火花が発生し、最悪のケースでは火災につながってしまう。
また、古くなった銅線は酸化して電気抵抗が大きくなり、抵抗による発熱が発火の要因となることもある。
ワイヤーの劣化ではなく、接続不良によっても同様の結果となる。整備の際にバッテリー端子への締結が十分ではなく、緩みによって火花が出る危険性もある。
●給油時の発火も意外に多い
多くのクルマに使用されているガソリンには、気化しやすくて引火点が低いという性質がある。この特徴ゆえに自動車用エンジンの燃料として優れているのだが、取り扱いには十分な注意が必要。
セルフ式ガソリンスタンドではユーザー自身が給油作業を行う。給油中のクルマの周囲には気化したガソリンが漂っているので、もしこれに引火してしまうと大変なことになる。
セルフスタンドの給油機に静電気除去装置が取り付けられているのは静電気による火花の発生を防ぐためだ。
もちろん給油中のくわえタバコなどはもっての外だが、実際にこれが原因のガソリンスタンド火災も起きている。ガソリンは引火しやすい物質だということを常に心にとめておきたい。
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