10年ほど前から「空飛ぶクルマ」という言葉をよく耳にするようになった。そして「2025年には、それが日本の空を飛ぶ」という……これは凄いこと! その2025年に向けた空飛ぶクルマ開発の現況はどうなのか?
※本稿は2023年5月のものです
文/佐藤耕一、写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2023年6月26日号
■空飛ぶクルマの過去・現在・近未来(数年後)
「空飛ぶクルマ」。その言葉をよく聞くきっかけとなったのは、ドローンの登場だろう。電動モーターによる緻密な出力制御のおかげで、安定して飛行するその姿は、空飛ぶクルマを現実のものとして感じさせるのに充分だった。
背景となるのは交通渋滞の深刻化。日本では実感しにくいが、世界的にはクルマの増加や都市の人口集中が加速し、交通渋滞が深刻な問題となっている。東南アジアや南米の新興国はもちろん、先進国でも渋滞問題は多い。特にアメリカ西海岸の激しい通勤渋滞はよく知られている。
日本のような鉄道網はないので、通勤で毎日、社会活動がマヒするようなヘビーな渋滞を経験していれば、空の移動手段をどうにかして実現したいと考えるのも自然なこと。
空飛ぶクルマなら、ヘリコプターではなし得ない低コスト化や低騒音が可能。今世界中で熱い開発競争が行われているのも納得だ。現在、主な開発会社は世界で15社前後あり、2025年には数社の機体が商用化される見込みだ。市場規模は2040年までになんと160兆円という巨大産業になると見られている。
日本ではスカイドライブが「SD-05」の開発を進めており、2025年大阪万博でのエア・タクシーサービスの実現を目指している。航続距離が10kmと限られるが、離島間やへき地への移動、緊急医療用など、ヘリコプターでは商用化が難しかった場面で活躍が期待されている。
すでに予約販売を開始しており、ベトナムから100機のプレオーダーを受けたほか、個人向けにも販売実績を挙げている。価格は約2億円と決して安くないが、ヘリコプターと比べると格段にシンプルな構造であり、将来的な低コスト化のポテンシャルは高い。
■空飛ぶクルマの仕組みやパワートレーンはどうなってんの?
空飛ぶクルマは機体の形状により2種類ある。ドローンのようなマルチコプターと、飛行機のような主翼の付いた固定翼機だ。いずれもモーターでプロペラを駆動し、垂直離着陸が可能なことから、eVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ぶ。ヘリポートのような場所で離着陸できる。
リチウムイオンバッテリーでモーターを駆動するものがほとんどだが、例外としてホンダ開発のハイブリッドeVTOLがある。バッテリーだけでは航続距離が短いので、F1やハイブリッドカー開発で得た知見を応用し、ガスタービンで発電するハイブリッドを開発。航続距離400kmを達成する計画だ。
マルチコプターはドローンのように垂直離着陸し、固定翼機はプロペラが水平・垂直方向に可動するものや、移動用と離着陸用に別々のプロペラを持つものがある。
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