成否はダイムラーの企業統治次第!? 「日野自動車と三菱ふそう経営統合」のウラに交錯する各社の思惑

成否はダイムラーの企業統治次第!? 「日野自動車と三菱ふそう経営統合」のウラに交錯する各社の思惑

 排出ガス不正から経営危機に陥っていた日野自動車が、三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を発表した。クルマの脱炭素、次世代技術は、もはやメーカー単独でできるものではないことの証明かもしれない。日野、三菱ふそうの経営統合を深読みする。

※本稿は2023年6月のものです
文/福田俊之、写真/ベストカー編集部、トヨタ自動車
初出:『ベストカー』2023年7月26日号

■日野と三菱ふそうの経営統合

2023年5月30日、経営統合の調印式が行われた。左から小木曽(日野)、佐藤(トヨタ)、ダウム(ダイムラートラック)、デッペン(三菱ふそう)の各CEO
2023年5月30日、経営統合の調印式が行われた。左から小木曽(日野)、佐藤(トヨタ)、ダウム(ダイムラートラック)、デッペン(三菱ふそう)の各CEO

 排出ガス不正という不祥事を起こし、経営危機に陥っていたトヨタ自動車系の商用車メーカー、日野自動車。

 どのように経営再建を果たすのか注目を浴びていたが、2023年5月30日、同じ商用車メーカーであるドイツのダイムラートラックが株式の9割を保有する三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を電撃発表するという思わぬ展開となった。

 合同記者会見で新設する持ち株会社に共同出資するトヨタの佐藤恒治社長、ダイムラートラックのマーティン・ダウムCEOの両首脳は「日野と三菱ふそうは対等の立場である」と強調。

 統合の目的もカーボンニュートラルという商用車にとって困難な課題を克服するための仲間づくりであるとして、売り上げや販売台数などのスケールメリット追求は二の次という雰囲気づくりに躍起であった。

 異なる会社を事実上ひとつにまとめる経営統合は極めてデリケートな事案であるだけに、ダイムラートラックによる日野の救済という見方の払拭に力点を置いた格好だ。

 もっとも、企業連合はメリットがあるなら一緒になればいいなどという単純なストーリーではまず成立しない。この統合もダイムラートラックが日野に触手を伸ばしたきっかけが一連の不祥事による経営危機だったことも興味深い。

 その接触のタイミングは日野の不正が発覚した2022年3月の数カ月後で、そこから両社で統合の検討を重ねてきたと明かされた。言い換えれば不正の一件がなければダイムラートラックはトヨタグループという城壁の中にいる日野に手出しできる状況ではなかったということになる。

 その日野がピンチに陥ったタイミングでダイムラートラックがすかさず経営統合を打診したのは、まさに機を見るに敏。しかも「我々が日野を支えるのは限界がある」(佐藤社長)という正直な発言からも察せられるように、親会社のトヨタが日野を持て余していることを見抜き、交渉を進めたとも見て取れる。

 実際、商用車のグローバルメジャーであるダイムラートラックが、日野を事実上手中に収めたことはフォルクスワーゲン、ボルボトラック、スカニアなど競合企業にとっては大きなプレッシャーになる。

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