2022年4月に登場した軽バッテリーEVの日産サクラ/三菱ekクロスEVが絶好調だ。日産によると、日産サクラが受注開始から5万台を突破したとのこと(2023年7月時点)。今後もさらに売れ続けていくことが予想される。BEVという使い勝手に懸念のあるモデルでありながら、なぜここまで受け入れられたのか? 軽BEVの今後とあわせて、考えてみよう。
文/吉川賢一、写真/NISSAN、MITSUBISHI、HONDA
■軽というクラスを超えた質感を持ち合わせつつ、現実的な価格を実現
サクラ/eKクロスEVのよさといえば、軽とは思えない滑らかで力強い加速フィールや、回生ブレーキによるワンペダル減速のフィーリングの良さ、軽自動車規格による小さなボディサイズと優れた小回り性能、静粛性の高さなどが挙げられるが、先進的な内装は、サクラ/eKクロスEVならではの魅力。
特に、運転席前に広がるツインモニターは、原価がいくらかかっているのか心配になるほど。ステアリングホイールも、車両価格500万円クラスのアリアとまったく同じ2スポークのステアリングホイールを使っている。
これが、補助金を加味すれば200万円ちょっとで手に入るのだから、「BEVである」というハードルさえクリアできれば、このクラスのクルマを検討している人にとっては買わない理由はない。
■セカンドカーでこそ魅力を発揮するBEVを軽自動車で実現させたことが成功の理由?
そのBEVであるというハードルを低くしたのが、「軽自動車で実現させた」ことだ。
サクラ/eKクロスEVのバッテリー容量は20kWh。近所の移動に使う用途であれば、1充電で180km(現実的な航続距離は0.7掛けの130km程度らしいが)走るサクラ/eKクロスEVで充分であり、この容量だからこそ「補助金込みで200万ちょっと」という車両価格は実現できている。
1000km走るBEVでも、(現時点は)充電には時間を要するし、出先で充電する際、限られた充電スポットを探さなければならないし、充電待ちが発生していればそこに並ばなくてはならない。
こうした充電環境における利便性を追求すれば、BEVがファーストカーになるためには、航続距離は何キロあっても足りないことになる。
BEVは「ちょっとそこまで」に使うセカンドカーとして導入するのが現時点の最適解であり、そのセカンドカーで導入するべきBEVが、こちらもセカンドカーとして需要の高い軽自動車で実現したことが、多くの人が関心を持った理由であろう。
軽自動車とすることで、BEVの負の要素を薄くし、魅力を最大限発揮させることができたのだ。
ちなみに、日産ディーラーの担当者に聞いたところ、サクラを求めてディーラーへ来るユーザーは、事前にしっかりと下調べしてからやってくる人が大半で、ディーラーで航続距離を聞いて購入を諦める方はほとんどいないそう。
充電についても、家庭用充電設備だけでなく、VtoHについても調査済みで、なかには説明すら不要という人もいるとのこと。購入者の関心事は、補助金と納期に集中しているといい、その2点に納得すれば即決する人が多いそうだ。