先日、日産はGT-R2024年モデルを発表。そのモデルに、新たに開発した騒音規制に対応する静かな新マフラーを採用。このように、自動車や関連メーカーは、クルマが発する「音」をできるだけ静かにするよう、日々苦心している。しかしながら、街中では、ものすごい騒音を発しながら走っていくクルマやバイクを見かけるときがある。なぜ街中を走っているマフラー音がうるさいクルマを警察が取り締まらないのか?
文/吉川賢一、写真/日産、AdobeStock
■騒音規制値は1971年の規制から40%も低減されている
現在の日本の騒音規制は、不正マフラーへの改造禁止を徹底するため、国際基準で決められた「フェーズ2」と呼ばれる規制値を新車の義務としています。
規制値は、乗用車やトラック、バスなど、車種ごとに細かく区分けされており、その基準を満すことが、日本で販売するための前提条件です。
そもそも騒音規制をする狙いは、「健康への被害を軽減するため」。今から約50年前の昭和40年代、日本中に道路が張り巡らされていくに従い、クルマから発せられる音が、騒音問題として取り上げられるようになりました。
特に、加速する際は大きな音が出ることから、道路周辺に住む住民が、頭痛や睡眠障害を訴え、健康被害が問題視されるように。乗用車はもちろん、トラックやバスなどは、今よりもずっと音がうるさかったのです。
ちなみに、1971(昭和46)年の加速騒音規制値は84dB。おおよそ、現在の救急車のサイレンくらいの音量でしたが、2020年時点では76dB(マイナス8dB≒40%)まで低減されています。
それでも、まだ「うるさい」として、フェーズ3という高い規制値まで引き上げようとしているのが現状です。
■騒音に関する法律は、「近接排気騒音」、「加速走行騒音」、「定常走行騒音」の3つ
クルマが発する音の規制に関しては、具体的には、「近接排気騒音」、「加速走行騒音」、「定常走行騒音」の3つの指標で、規制値が与えられています。
エンジンのレイアウト(フロントエンジンか、リアエンジンか)や積載量、製造年などによって規制値は多少異なります。
「近接排気騒音は96dB以下」「加速走行騒音は76dB以下」「定常走行騒音は72dB以下」というのが、現在の一般的な基準値となっています。
このうち、車検のタイミングで測定するのは「近接排気騒音」です。他の2つの指標は、自動車メーカーが新型車を発売する前に測定したうえで、国土交通省へ申告して認証を取っています。
さらに、平成28年10月以降に登場したクルマについては、近接排気騒音の「相対値規制」が導入されており、新車時に確認された排気騒音値からプラス5dB(デシベル)以下の測定値に収まるマフラーであることが必要となります。
規制値に合致していなければ車検を通すことはできませんし、そうなれば公道を走ることもNGです。