おかしくない? 白バイ隊員に課せられる「取り締まりノルマ」ととほほなウラ話

■無免許 酒気帯び 怪し〜い外国人……取り締まりを超面倒にするクソつかみ事案とは?

仕事をしていると「面倒な事案」はつきもの。さらに、「さあこれで帰れるぞ!」と思った矢先の無情な知らせ……あなたにもきっと経験があるはず(※画像はイメージです Caito@Adobestock)
仕事をしていると「面倒な事案」はつきもの。さらに、「さあこれで帰れるぞ!」と思った矢先の無情な知らせ……あなたにもきっと経験があるはず(※画像はイメージです Caito@Adobestock)

「免許証を見せて下さい」の白バイ隊員の問いかけに、違反者は「すみません、無免許です」と回答、しかも酒の臭いがプンプン……。

 または「スミマセンデース」と拙い日本語の外国人さん、さらには「違反なんか認めませんから、見せません」と反骨オーラバリバリの違反者……。どれもこれも白バイで取り締まり中に出会う困った事案、あるあるだ。

 こうしたややこしそうな違反者に当たった時は、ガラカミ(身柄拘束。すなわち現行犯逮捕事案のこと)に発展することがあり、クソつかみ(ここでは余計な仕事といった意味合い)事案になる可能性がきわめて高い。

 ちなみに無免許&酒気帯びと怪しい外国人の違反者はガラカミ率が高い。特に怪しい外国人はオーバーステイ(不法滞在)の疑いがあり、道交法の枠を超えてややこしくなる。

 反面、ただの免許証不提示の場合は、他のお巡りさんが応援に来ると、提示に応じる場合が多い。なぜかというと、違反者を取り締まった警察官の言葉遣いや態度が気に入らず、「こいつにだけは見せたくない」という気持ちになってしまっているからだ。

 取り締まりや検問などでやっかいなのが、亀の子事案だ。これは文字通り、亀のように車両の中に閉じこもったままの状態になることだ。

 なかには、警察官との応答を拒否し続ける違反者もいるが、そうした場合は、窓をぶち破ってでも逮捕することになる。小隊員総出で、違反者を車両から引きずり出すわけだ。

 ここまでになると、さすがに小隊員みんながカリカリしているから、「この野郎! 絶対許さん!」という状態になってしまう。

 こうしたクソつかみ事案にぶち当たってしまうと、担当の警察官は、本当にがっくりくる。加えて、小隊の仲間に助けてもらったとなれば、彼らの貴重な警ら時間を奪ってしまい、本当に申し訳なく思うのだ。

 仕事の性質上、こればっかりは、隊員同士お互い様であり、応援に駆けつけてくれるのだが。とはいえ、逮捕事案ともなれば小隊全体の1日分の切符売上げがゼロになることもある。

 小隊全員が、手分けして書類作成業務に追われるからで、警らに出ている時間がなくなってしまうのだ。

 本来ならば悪質な違反者を逮捕したのだから、世の中のためにはよかったことなのだけど、その手間ぶんのノルマがチャラになるわけではない。現実はご苦労さん的な評価があるだけで、おしまいなのだ。

 特に種目別違反で、指定されている違反の件数が少ない場合は、小隊みんなで夜間の一斉取り締まりを実施し、件数を稼いだこともあった。ただし、夜間という時間帯は違反が取りやすいぶん、ガチの悪質違反者が多かった。

 つまりヘタをすると、クソつかみになってしまうってこと。これは隊員たちにとっても、ハラハラドキドキものだった。

 クソつかみ事案は、本当に当然やってくる。

 マルソウ対策の完徹明けの早朝、まもなく解散という、実にありがたくないタイミングで、クソをつかんでくれた若い隊員ペアもいた。

 どうやら野暮用のため、覆面パトカーで出かけたついでにスピード違反を取り締まったところ、無免許と酒気帯びのダブルパンチだったという。これぞ典型的な逮捕事案ってやつだ。

 勤務終了ののんびりムードの小隊部屋に応援要請の無線が入った時には、みな絶句。取り扱った若い隊員ペアの先輩班長は怒り狂い、いっぽうで分隊長(巡査部長)の私は、まあまあとその班長をなだめながらも、心の中はトホホだった。

 長年、交機や所轄で白バイ人生を続けていると本当にいろいろなクソつかみ事案に遭遇する。それだけ、世の中、いろんな訳ありドライバーであふれているってことだ。

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●洋吾(ようご):元警視庁の警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。運転技術はいまいち、ドジでオッチョコチョイだが、3年連続で取り締まり件数トップの実績もあり。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。2022年10月『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』を上梓。同書のイラストは同ブログのマスコットキャラクター「ニャンコ白バイ隊」。

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