■2台の空力対策の違い
それにしてもクラウンは独自の存在感を持つプロポーションですね。SUVの車高をセダンのサイズまで引き下げて、スタイリッシュな形を作りました。
ウエストラインから上は4ドアクーペを表現しながら、大きなタイヤとブラックアウトしたフェンダーモールで下半身のボリューム感を演出してSUV風の「力強さ」を印象付けています。
オフロードSUV風を狙った演出かもしれませんが、ホイールハウスのオープニング隙間は、コブシがガバガバに入る程の大きさで、欧州車が持つ、緻密な上質感ではなく、隙間をわざと大きく魅せるアメ車の荒々しさです。
X4を見てください。今回はMモデルということもありますが、基準モデルでも同様に隙間を詰めています。言うまでもありませんが、この部分の隙間が大きいと、ボディサイドを流れる風をタイヤハウスの中に巻き込んで空気抵抗を増加させたり、クルマを浮かせるリフト力の要因になったりします。
クラウンは、空力的に特筆する点はそれ程ありません。それより、独自の新たなクロスオーバー像の演出を最優先にしたデザインです。
しかし、フロントの工夫は面白い。バンパーのグリルはダミーで、実は風を通さない、つまりエンジンルームに風をあまり入れない。これは空力的に大きな効果があります。
フロントグリルからエンジンルーム内に、大量の走行風を取り入れた場合、空力効果のために隙間を詰めたタイヤオープニング部分やアンダーカバーの後端から上手にこの風を抜かないと、大きな空気抵抗やリフト力が発生します。さらに熱気が溜まる原因にもなります。
これを技術的に上手く処理しているのが、高額なガソリン代と高速走行頻度の多い欧州車です。
私はR35GT-Rでは、このエンジンルーム内の風を強力に抜くことでエンジンルーム内に負圧の領域を作り、空気抵抗の低減や、強いダウンフォース作りをしました。しかし、国産車では、欧州車並みにエンジンルーム内の風を抜く空力技術は見かけません。
しかし、クラウンは別の方法……つまり、BEVがやっているグリルの穴を塞いで、エンジンルームに入る風量を必要最小限に減らし、空気抵抗を減らす方法を採用してきました。
エンジンルームに入る冷却風量を必要最低限に減らして、エンジンルーム内の風がタイヤハウスの隙間などから、効率よく抜けなくても、空気抵抗が悪くならない工夫をしたのです。
例えば、グリルの穴をすべて塞いでエンジンルームに風を入れない処理をすると、0.29くらいのCd値が0.27程度に減らせます。効果は絶大です。
■ヘッドライトの後退角が及ぼす空力への影響
ところでクラウンのヘッドライトの後退角は、空力的にはよくありません。最新の新幹線もそうですが、フロントマスクは少ない後退角で正面から風を受け止めて、側面は真っすぐボディサイドに沿わせるように風を流すのがよいのです。
ヘッドライトに大きな後退角を付けると、斜め後方に風が膨らんで流れ、ボディサイドの風とぶつかって乱流(渦)を作ります。実はフェアレディZのようなフロント形状は空力的にはよくないのです。
X4は対照的にフロント周りから、上手く風を取り込む形状にしています。そして、エンジンルーム内の風もしっかりと抜けるデザインにしています。風が上手く抜けるのであれば、フロントから多くの冷却風を取り入れた方がいい。
X4はバンパー両サイドのスリットから入れた風がフェンダー内部に抜けて、これがブレーキも冷却します。ボディサイドを流れる風はホイールサイドも綺麗に流れ、この風の流れが作る吸い出し効果により、フェンダー内部やエンジンルーム内の空気を排出しています。
コメント
コメントの使い方毎回気になるのですが、水野さんが持ってるこの点数のボードは一体何ですか?
何かのスポーツの点数表でしょうか?
どなたか教えてください