クロスオーバーへと大きく舵を切った新型クラウン。先代型までの伝統的4ドアセダンとは異なる、新たな価値観を持った1台の仕上がりのほどは? そしてクロスオーバーサルーンの存在意義とは? BMW X4 Mと比較しながら評価する。
※本稿は2023年7月のものです
文/水野和敏、写真/ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年8月26日号
■クラウンとX4で対決
さて、今回はクラウンを取り上げます。ベストカー読者の皆さん、新型クラウンをどのようにとらえていますか?
私は数年前からずうっと言い続けていますが、セダンはヒエラルキーが明確。つまり階級なのです。それに対しSUVやクロスオーバーは、セダンの持つ厳然たる階級を打ち崩した階層レスな存在なのです。
さらにジェンダーレスという要素もあります。「男っぽさ」とか「女性らしさ」といったジェンダーを感じさせないのがSUVで、クラウンにもジェンダーレスを感じます。
クラウンは今回のモデルチェンジに際し、敢えてセダンをやめてクロスオーバーとすることで、これまでのヒエラルキーにこだわらない、新たなユーザー層を開拓していますね。
BMWも同様です。3シリーズ、5シリーズ、7シリーズといったセダンシリーズはやはりヒエラルキーが明確。それに対しクロスオーバーSUVの「X」モデルを派生させる。車名の奇数は正統派SUVとして、今回のX4のような偶数車名はクーペSUVとして、よりクラスレスな自由なクルマとしているのです。
クラウンには遅れてセダンが追加されますが、まさに戦略的な投入。クロスオーバーを先に出して「クラウンは変わった」ことを強く印象付け、遅れて追加するセダンで、フォーマルな既納先ユーザーや、社用と官公庁向けニーズに応えようとしています。
さらにSUVやエステートも用意して、あらゆる要求を取り込む、全方位戦略の車種構成にして一気に販売台数の拡大と収益の向上を狙っています。逆に、車種構成の効率化と併せ、周辺車種の整理統合も進めています。
新型クラウンは、皆さんはFFプラットフォームを使ったクロスオーバーモデルになったことで驚いたかもしれませんが、私はなるべくしてこうなった、と思っています。
これまでの延長線上でFRセダンを作り続けていたのでは、既存ユーザーの高齢化や販売領域の狭さから販売台数を落とし、遠くない将来、消滅することになるからです。思い切ったコンセプトチェンジは不可避だったのです。
クロスオーバー化は、セダンでもなければSUVでもない……といった新たな価値観、ファッショナブルでクラスレスなユーザー意識などを考えれば、当然の流れです。
クロスオーバーにはSUVのような車重や空気抵抗などの無駄がありません。でもセダンとは違う。ユニーク性とファッショナブルな感覚を持ち合わせ、そしてECOにも寄与する。クラウンは「新たなカテゴリーとクルマ像」を提示するためにクロスオーバーを先出ししてきました。
例えばベンツCクラスのオールテレーンは、正統派を守りつつ、実用性と走破性を上げたクロスオーバー。レガシィアウトバックは、都会派アウトドアと、生活実用性を併せ持つクロスオーバーです。古くは私が開発した2代目ステージアのAR-Xも同様です。
コメント
コメントの使い方毎回気になるのですが、水野さんが持ってるこの点数のボードは一体何ですか?
何かのスポーツの点数表でしょうか?
どなたか教えてください