■600psといっても、けっして暴力的動力性能ではない
GT-RのV6、3.8Lツインターボは驚くほど静かに、安定したアイドリングをします。
一般道を普通に流れに乗って走るような場面でもまったくストレスなく、スムーズな走りを見せてくれるし乗り心地もいい。サスペンション自体は硬いのですが、路面からの入力に対し、スッと一発で動きを止めてくれるのでクルマの姿勢が常にフラットです。
ペースアップしていくと、とにかくスタビリティが高く、ビタリと4つのタイヤが路面を掴んでいる印象。何が何でも路面を離さない! という安心感があります。
ただネガもあって、あまりにもガッチリと前後左右4つのタイヤが路面を掴むので、コーナリング時の「旋回軸」を感じ取りにくい側面があります。このあたり、ポルシェ911は上手で、高いスタビリティを作り出しながら、スッと曲がっていく。GT-Rは、ややアンダーステア気味の操縦特性です。
全開加速を試すと、もちろん強烈な加速なのですが600ps、66.5kgmという数字からイメージするような暴力的な加速、という感じではありません。
エンジンは鋭く吹け上がり、6速DCTは独特の、レーシングマシンのような“ギューン”というノイズを発しながらシャープにレスポンスよくシフトアップしていく。
全輪駆動とも相まって、タイヤがグリップを失って姿勢を乱すようなことはなく、コーナーからの脱出で一気に加速をしても後輪が暴れるようなことはありません。
R35GT-Rのデビューは2007年なので16年前。この16年の間に熟成されてきたということはあるのでしょうが、なによりもホイールベースやパワートレーンのレイアウト、前後重量配分の設定など、基本設計時のパッケージング思想が優れていたことが大きいです。
またサスペンションアーム長や取り付け点なども途中で変更することは容易ではありません。基本設計が優れているからこそ、今でもこうして600psエンジンで世界のトップレベルで勝負ができるのです。
一方のコルベットZ06。こちらも一般道を普通に走ってみると乗り心地のよさに驚かされます。エンジンンもさすがに5.5Lの排気量があるので低速トルクもたっぷりあって余裕の走りです。
ところがひとたびアクセルを踏み込むと……!
“ギュワー!”っと一気にレッドゾーンの8500rpm超まで吹け上り、8速DCTが鋭くシフトアップ! NAらしく、回転の上昇に対しリニアにトルクが盛り上がり、2速、3速はなんとも息の長い加速が味わえます。
V8、5.5Lとは思えない吹け上りで、これはターボのGT-Rとも違ったものです。近年はレブリミッターを控えめにするのが流行ですが、このクルマは高回転でブン回すのが大得意なのです。
■高い操安性を見せるコルベットZ06
5.5L、NAで最大トルク63.6kgmというのはもの凄い性能です。一般的に、NAでは1000ccあたり10kgm前後なので、6.4L級のトルクということになります。
現代のコルベットはミドシップですが、操縦性にはまったくシビアなところはありません。追い込んだコーナリングをしても、リアタイヤがしっかりと路面を掴んで離しません。
このあたりはGT-Rにも似た特性なのですが、ここからさらにハードに攻め込んでいった時、GT-Rはフロントが“スススっ”とアウトに出ていくのですが、コルベットはジワリとフロントが反応してノーズをインに向けていく。急激な動きではないので、高い速度域でも安心して曲げることができるのです。
ピーク時でありながらこの優しく滑らかな操縦性の作り込みは見事です。600馬力を超えるハイパワーエンジンを上手に使いこなしています。リア345/25R21というミシュランパイロットスポーツ4Sとのバランスもいいのでしょう。
現代の600馬力級のスーパースポーツは、今回の2台に象徴されるように、決して暴れ馬ではなく、しっかりと調教されたサラブレッドなのです。
高いシャシー性能に仕上げられた車体が勝っていて、大パワー、大トルクをしっかりとコントロール下に置くことができる。だからこそ、ドライバーは安心して600馬力を味わうことができるのです。ただし、価格もスーパーモンスターです。
コメント
コメントの使い方