雨の日の運転に欠かせないのがワイパー。自動車の長い歴史において、現在までこれを超える雨対策の装備は生まれていない。今回は大切な部品なのに軽視されがちなワイパーについてしっかり考えてみたい。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、Adobe Stock、FavCars.com、アイキャッチ画像/Marcelo Trad Nery@ Adobe Stock
発明から120年。いまも続くワイパーの歴史
最初のワイパーが考案され、特許を取得したのが1903年。発案者はアメリカのメアリー・アンダーソンという女性実業家だった。
冬のニューヨークを訪れた彼女は、路面電車の運転手が窓ガラスに付着した氷雪によって視界が遮られるのを目撃。これを解決する手段はないものかと考えて、ゴムを取り付けたブレードで雪や雨を除去する装置を発明した。
当初は運転手がワイパーに気を取られて運転に集中できないといわれることもあったが、やがてその有効性は認められ、当初は手動だったワイパーもエンジンのキャブレターと連動して自動で動くようになり、そこから電動式へと進化した。
以降、時代に応じて形状や素材、動きの制御などは洗練されていったが、ワイパーの基本的な構造は現代でも変わっていない。
ワイパーの作動によって視界がクリアになるのは、厳密にいうと水滴がすべて除去されているからではなく、水の粒がならされて均一な膜を作るから。これで光の乱反射が抑えられ、良好な視界が得られる。
しかしこの記事では、わかりやすくするための均一な水膜を作ることを水滴の除去と表現する。
意外に多い? ワイパーのトラブル
雨の日に視界を確保するために欠かせないワイパーは、シンプルな構造ゆえにトラブルを起こしにくいと思いがち。だが、実際には細かいトラブルが起きやすい。
最大のトラブルは水をしっかり除去できないというもの。ウィンドウの表面に付着した水をワイパーゴムによって取り除くのだが、ワイパーを動かしてもクリアな視界を得られないことがある。
ワイパーにトラブルが起こっている場合、ドライバーは動作音でそれを知ることができる。
ワイパーの作動中に、断続的に何かをこする音が聞こえてくると、それはスムーズな水はけができていない証拠。この音は一般的に“ビビリ音”と呼ばれている。
水滴の除去がうまくできないトラブルに関してはいくつかの原因が考えられる。それについては後述したい。
次にあげるトラブルはワイパーがうまく動かない、またはまったく動かないというもの。これはワイパーを作動させるモーター自体が故障している、もしくは電気配線系の不具合が原因の可能性が高い。
ヒューズ交換でトラブルが解消することもあるが、そもそもヒューズが切れた原因を特定しないと同じトラブルが再び起きるかもしれない。
つまりワイパーが動かない場合は、ディーラーやカー用品店などでプロにチェックしてもらうのが賢明だ。
次項では、このような動作系のトラブルではなく、先にあげた水滴をうまく除去できない問題の原因とその直し方、そしてワイパーを長持ちさせるコツにスポットを当てて検証していこう。
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