可愛らしいフロントマスクで登場したコンパクトミニバンのシエンタ。7人乗りの3列シートを畳むと荷物室が広いのも特徴と言える。しかし、実際に乗ってみると苦手分野も見えてきたのだ。
※本稿は2023年9月のものです
文/水野和敏、写真/ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年10月26日号
■乗ると左右差を感じるクルマに……
ゆっくり走りながらステアを大きく切ると、反応が薄いです。しかも、左はより反応が薄く、右に切った反応のほうが早いです。操舵力も左が重く右が軽い。
これはショックアブソーバーですね。左フロントのショックアブは滑らかに動きだすので、右転舵時は左フロントがスッと沈んで応答が早い。対して左旋回では、右側フロントショックアブの動きはじめが渋いのでストロークが遅れ、初期応答が鈍くなっています。
あえて左右ショックアブの減衰特性を変えているとは思えないので、これは製品の製造誤差です。おそらく0.03~0.05m/sec.あたりの微小入力域の減衰特性に差があるのです。
実際、JISの規定による製造誤差の範囲は10%まではOKなので、誤差の上下範囲の組み合わせでは、このような左右差が体感できることもあります。もうちょっと管理をして欲しいところです。
ふた昔も前のタイヤや車体構造であれば、このような製造誤差は感じられない「緩さ」がありました。しかし、タイヤの応答性や剛性バランス、そしてステアリングの作動精度や車体剛性なども格段に向上した現状では、昔の管理基準のままでは粗さが体感できてしまうのです。
■足と騒音に若干の不安が
シエンタの足は、バネ自体はソフトなのですが、路面のザラザラ感を伝えます。これもショックアブです。低速域の作動抵抗が大きく、0.08m/sec.以下での動きが渋いので路面の凹凸を敏感に伝えています。フリードのショックアブは低速の抜きがよくスムーズに動きます。
車体の剛性に問題はありません。しっかりとした車体です。速度を上げていった際の操舵に対するリアの追従バランスも悪くない。フロントがスッと向きを変えるのに対してリアもしっかりと付いてくる。
ただ、エンジンの“ガーガー”音が容赦なく車室内に入ってきます、これは煩い。欧州車のように、エンジンルームのエアコン吸い込み口周辺のシールをしっかりするだけで、ずいぶん改善されるはずです。
ブレーキはちょっとリアの接地が抜けてフロント頼りです。フルの乗車も考慮して、ノーズダイブを抑えてリアの制動を活かして欲しいです。
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