2023年4月~9月期の登録車販売台数において、10位圏内にトヨタ「ノア」(5位、49,587台)、トヨタ「ヴォクシー」(7位、45,020台)、日産「セレナ」(8位、43,252台)と、3モデルがランクインするなど、安定した人気を誇るミニバン。いまでこそ、当たり前となった乗用ミニバンジャンルだが、このジャンルを切り拓いた一台は、2020年に販売終了となった「エスティマ」だ。
初代エスティマが登場したのは、1990年5月のこと。その後約30年間で3世代のみというロングライフだったエスティマは、いまも復活を望む声が多いモデル。「天才タマゴ」エスティマの魅力について振り返りつつ、生産終了のワケについて考えてみよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA
成功したとはいえなかった初代
「エスティマ」は、1989年の東京モーターショーでコンセプトモデルとして登場、翌1990年に発売されたモデルだ。当時急伸していたアメリカのミニバン市場をメインターゲットとして開発されたもので、そのスタイリングテーマは「たまご」。フロア中央部下にエンジンを75度傾斜させて搭載することにより、ミニバンらしからぬ走りと広い室内空間を実現しており、革新的なミニバンとして、大いに話題になった。
しかしながら、アメリカでは2.4L 直4エンジンでは非力だとして受け入れられず、日本においても、大きすぎて(全幅は1800mmもあった)かつ値段が高いという理由で、当初は販売が伸び悩むことに。ただ国内では、1992年に登場した、エスティマの全幅を1700mm以下にして5ナンバー枠に収めた「エスティマルシーダ」/「エスティマエミーナ」が大ヒット。一躍人気車へ躍り出た。
乗用ミニバン市場を確立させた2代目
エンジンをフロア下に搭載する、ミッドシップレイアウトだった初代エスティマは、ミニバンでありながら独特のゆったりとした乗り味を持ち合わせていたが、狭いスペースに収められるエンジンの種類には限りがあるため、結果的に「非力」という評価に結びついてしまった。
そこで2000年に登場した2代目では、カムリをベースとしたFFレイアウトに変更、エンジンも3.0LのV6が搭載可能となった。初代のたまご形のワンフォルムデザインを継承しつつ、低床化で実用的な空間を確保。両側スライドドアの採用や、後にハイブリッドを追加設定するなど、ファミリーカーとしての魅力を大いに高めた。
当時のミニバンといえば、商用バンをベースとしたキャブオーバー型のハイトワゴンであり、商業車チックなデザインや、背高ゆえに頼りない走行性能、広くはない車室内の居住性など、ファミリー層にはイマイチ刺さりにくいモデルばかり。2代目エスティマは、ミニバン市場を、「商用バンをベースにした家族向け乗用車」から、「走りもデザインも楽しめるオーナーカー」にイメージチェンジさせたのだ。
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