ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。
第二十五回目となる今回は、空前の好決算を迎えた日本の自動車メーカー各社。しかし安穏とはしていられない!? 「EV戦争」の最前線を分析する。
※本稿は2023年11月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、写真/TOYOTA、ほか
初出:『ベストカー』2023年12月26日号
■各社空前の好決算! でも…… 「トヨタのマルチパスウェイが勝った」??
「凄い」としか言いようのない好決算が並んだ自動車産業の2023年度上半期決算でした。
半導体不足から解放され、高い生産台数が続くところを歴史的な円安が起こったわけですから、輸出産業である自動車会社が好決算を叩き出すことは誰しもが予測はできたでしょう。それにしても、ここまでの好決算になるとは予想できなかったでしょう。
国内乗用車主要メーカー7社の本業の儲けを示す営業利益は上半期の合計が4兆2417億円(前年比96%増)に達し、営業利益率は9.2%まで上昇しました。
四半期の切り出しで収益性を追えば、営業利益は第1四半期(4~6月期)の8.6%から第2四半期(7~9月期)には9.8%まで上昇し、近年最高水準に達しています。
好調な各社の業績のなかで群を抜いているのが業界盟主のトヨタ自動車で、第2四半期(7~9月期)の営業利益は13%に達し、テスラを大きく抜き去ったことで話題になりました。
メディアではトヨタのマルチパスウェイが勝ったかのような極端な意見も散見します。
モデル3の新型モデルへの切り替えの踊り場のところに加え、サイバートラックの生産立ち上げ準備、次世代EVモデルの開発や新生産システムを装備したメキシコ新工場の立ち上げなど、先行投資の負担の頂点にいるのが現在のテスラです。
一方、コロナ禍の好採算な受注残を消化し、EV投資の拡大期への踊り場で好採算なハイブリッド事業の収穫期に立つのが現在のトヨタです。両社を同列で比較することは危険です。
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