ユーザーの嗜好が異なるからか、日本では存在感が薄いアメリカ車。でも、なかには人気を獲得したクルマももちろんある。そんな「青い眼のサムライたち」を振り返っていこう!
※本稿は2023年11月のものです
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか、車両解説/永田恵一
初出:『ベストカー』2023年12月10日号
■アメリカ車はクルマ版「青い眼のサムライ」
江戸時代初期に徳川家康の外交顧問を務め、三浦按針という日本名も持っていた英国人のウィリアム・アダムスは「青い眼のサムライ」と呼ばれていた。
日本に来たのは1600年、36歳の時に航海士として乗っていた船が豊後国(現在の大分県)に漂着したから。その後、家康に能力を買われ、通訳、外交のほか船の建造なども担い、1620年、55歳で平戸にて亡くなるまで日本の武士として生き抜いた。
日本人に支持されたアメリカ車は、いわばクルマ版「青い眼のサムライ」と言えよう。
昔も今も日本でアメリカ車が人気となる確率は低い。そんななかで多くの支持を集めるのは、どこかに日本人の好みに合う部分があるからだ。それを「武士の魂」とまでは言わないが、やはりサムライと呼ぶのがふさわしい。
■マッスル系に偏るかと思いきやセダンやワゴンも
今回このテーマで車名が挙がったアメリカ車は全部で17車種。日本車には少ないマッスル系スポーツカーが目立つが、アメリカが元祖とも言えるSUVも数多い。やはりこのあたりが「青い眼のサムライ」の主流ということなのだろう。
一方で、大型(アメリカでは中型)のセダンやワゴンもあって、アメリカ車らしい大らかな雰囲気や乗り味が支持されていたことが窺える。
近年のアメリカ車はヨーロッパ車的なクルマが増えてきていて、そのあたりの「独特の魅力」が薄まっていることは否定できない。それが日本で支持されるアメリカ車が増えない理由なのかもしれない。
さて、どんなアメリカ車が出てくるか? 青い眼のサムライたちを紹介していこう。
■さまざまな「青い眼のサムライ」たち
●シボレー アストロ
アメリカではクライスラーが開拓したミニバン市場に後発として参入したモデルで、日本車で喩えればFR時代のエルグランドを拡幅したような存在だ。日本では標準車だけでなく、スタークラフトをはじめとしたゴージャスな仕様も人気になった。
●ダッジ バイパー
コルベットに対抗すべく歴代8L級のV10エンジンを搭載するという、いかにもアメ車らしいスポーツカー。日本で正規販売されたのは初代モデルだけで、特にコンバーチブルは何かと不便なクルマだったが、ファンは多かった。
なお、最後となった3代目モデルはサーキット仕様となるACRがニュルで7分1秒30を記録した。
●フォード マスタング
スペシャルティカーの元祖となるモデルで、初代モデルはファルコンというごく普通の乗用車がベースだった。初代モデルはカッコいい内外装を持ちながら、そのわりに安いことに加え、フルチョイスシステムという注文時の選択幅が広いことも理由にアメリカで大ヒット。日本でも若者にとって憧れの存在となった。
日本で最も人気となったマスタングは4代目モデルだ。このモデルはカッコよさというマスタングらしい魅力に加え、価格もV6の標準モデルなら約260万円とシルビアやプレリュードといった日本車のスペシャルティカーと比べられるほどだった。
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