■主戦場はニュルへ、そしてターボエンジンという選択
その後、シビックは日本での販売を打ち切り、タイプRもホンダのラインアップから消えた。だが、2015年に第4世代のタイプRの登場がアナウンスされている。
4代目のタイプRは究極のFFスポーツを掲げて開発された。そして発売前にニュルブルクリンクサーキットの北コースで、ルノーメガーヌRS275トロフィーRが記録したタイムを塗り替え、FFスポーツ最速の称号を手に入れている。
エンジンは2LのK20C型直列4気筒DOHC・VTECだ。タイプRとしては初めてターボの力を借り、310ps/40,8kg-mのスペックを手に入れた。
FK2型シビックタイプRは7月にイギリスから出荷され、日本では10月に正式発表されている。ただし、750台だけの限定発売だ。
その2年後の2017年7月、5代目のFK8型シビックタイプRが発表された。パワーユニットは2LのK20C型直列4気筒DOHC・VTECターボを受け継いでいるが、10psのパワーアップを実現し、応答レスポンスもよくしている。
6速MTにはシフトダウンのときに回転合わせを行ってくれるレブマッチシステムが加わった。また、サスペンションもデュアルアクシスストラットとマルチリンクの組み合わせとし、接地感とコントロール性を向上させている。
ニュルブルクリンクの北コースを7分43秒80で駆け抜け、VWゴルフGTIクラブスポーツSに奪われたFF最速の称号を奪い返した。
4代目のシビックタイプRからは世界に飛び出し、海外でも販売を行っている。これはスカイラインGT-RとニッサンGT-Rの関係と同じだ。
タイプRも研鑽に努め、ゴルフGTIやルノーメガーヌRSなどとFFスポーツ最速の座を競い合っている。ライバルと互角に渡り合うためにターボで武装し、300psを超える高性能を手に入れた。
それでいてアイドリングストップを採用し、燃費も向上させるなど、環境性能を高めているのだ。だが、高級なメカニズムを採用したため、販売価格は初代タイプRの2倍以上になっている。車格もアップし、かなり大柄になり、車重も重くなった。
が、初代のタイプRから頑固に守り通しているところも多々ある。その最たるものがレーシングエンジン並みに高性能なパワーユニットだ。
量産エンジンの領域を超えた手の込んだ製造方法を取っている。また、多くのスポーツモデルが2ペダルのATを設定するなか、タイプRはマニュアル車だけの設定とした。
今なお6速MTにこだわり続けているのだ。量産エンジンとは思えないほど気持ちよく回り、8000回転を超えても息切れしない。しかも快音を放つ。
駆動方式も前輪駆動のFFにこだわり続けた。そのなかで最速、最強を狙っているから、サスペンションの味付けもサーキットを走れるくらいポテンシャルを高めている。
ハンドリングはダイレクト感覚で、意のままの走りが自慢だ。スポーツ性が際立って高く、ライバルと比べるとスパルタンな印象が強い、これがシビックタイプRの伝統だ。
公道だけでなくサーキットを走らせても群を抜いて速い。
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当初は高回転NAユニットこそがタイプRのアイデンティティだったが、現行型は新たなステップへと進んだことになる。
また製造もイギリス工場で行われてはいるものの、開発は栃木の本田技術研究所を主体に実施されており、シビックタイプRの魂は消えてはいない。
3ペダル、そしてFFという現代のタイム競争には不利なパッケージングを守るのも、どこかタイプRらしさへのこだわりであろう。
500万円近い価格はたしかに高いが、もはやシビックタイプRは世界に誇る最強FFスポーツになっている。
それを考えるとホンダがシビックタイプRを存続させていることはどこか誇らしい。
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