BMW X1のプラットフォームは先代からのキャリーオーバー。熟成の域に達しており乗り心地も操縦性もイイ!! 残念だったのが後席の乗降性とシートクッションの薄さがマイナスポイントとなった。
※本稿は2023年12月のものです
文/水野和敏、写真/BMW、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年12月26日号
■上質な乗り心地と高い操縦性
ではいつものように歩くほどのゆっくりとした速度で、ステアリングを左右に大きく切ります。
操舵に対する反応は、ずいぶんとマイルドです。反応が薄いとか鈍いということではなく、しっかりと反応はしているのですが、車体の反応が穏やかなのです。
また、走り出して感じる路面のザラザラ感をスッといなして上質な乗り味を作り出しています。ロードノイズも小さいです。
これはショックアブの低速域、0.03m/sec域を抜いて、フリクションを小さくし、きちんと動かしていることに加え、ブッシュ類も柔らかくして路面の凹凸振動を吸収しています。
それにより、操舵に対する反応もマイルドになっているのです。バネは比較的硬いセッティングです。
ショックアブを緩めた分、バネの硬さで操舵に対する車体の反応を引き出しています。これは上質な乗り味です。X3クラスの質感です。
ただし、ペイント段差の波状路面を40km/hで通過すると、入力はスッとソフトなのですが次第に“タタン、タタン”と振動感が増幅されます。
これはショックアブの伸び側の減衰力が強いため、連続段差で足が伸び切る前に次の入力を受けてしまうためです。特にリアサスの伸び側です。
■スポーツモードでの乗り心地の硬さも逆にイイ
速度を上げていくと、操舵に対する前後のバランスはいいですね。変にフロントがつんのめるようなことはなく、フロントの動きにリアが遅れることなく追従します。
下り込みでブレーキングをしながらのターンインでも、フロント外輪に荷重が集中することはありません。安心感のある操縦性。このシャシーのセッティングは絶妙です。
スポーツモードに切り替えると、やや硬さを感じますが、操舵に対するレスポンスなど全体的にしゃっきり感が増して山道では好ましいです。
ちょっと路面のザラザラ感を感じるようになるとともに、ロードノイズも増えますが、けっして不快なほどではありません。
2Lディーゼルターボは、以前のBMWにありがちだったドカンとトルクが立ち上がる特性ではなく、マイルドにトルクが付いてくる印象。
アクセルの踏み加減に対し、ワンテンポ遅れてレスポンスする印象ですが、トルクの出方はリニアで加速に違和感はありません。
これは燃費を意識したチューニングです。トルク特性はドライバーに燃費のいい運転をさせる特性です。これは「賢い」出力特性のセッティングです。
フルブレーキを試します。初期からしっかりと制動力が立ち上がり、ノーズダイブも抑えられていて姿勢が安定しています。ブレーキのバランスもいいです。熟成された上質感を感じます。
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