「実はスポーツカーに不利」ってマジかよ!!?? みんな大好きリトラクタブルライトの消えた理由と復活可能性

「実はスポーツカーに不利」ってマジかよ!!?? みんな大好きリトラクタブルライトの消えた理由と復活可能性

 日本語で「格納式前照灯」という、リトラクタブルヘッドライト。かつてのスーパーカーやスポーツカーで多く採用されていたヘッドランプの方式だ。格納されている時は低く構えたスタイリングだが、スイッチひとつでライトが出てくるギミックには、筆者も当時ワクワクさせられたものだった。リトラクタブルヘッドライト誕生の経緯とともに消えた理由について振り返りながら、復活の可能性についても触れていく。

文:立花義人、エムスリープロダクション
アイキャッチ画像:Adobe Stock_Евгений Бордовский
写真:MAZDA、HONDA、TOYOTA、MITSUBISHI、SUBARU、ISUZU、NISSAN

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保安上の制限と空力性能の追求の両立させるための策

 世界で初めてリトラクタブルライトを採用したのは、1936年にアメリカで少量生産された高級車「コード810」というモデルだ。ダッシュボードにあるハンドルを回すと、流線型のフェンダーに格納されているライトが回転して出現するという仕組みだった。

 国産モデルでは、1967年に発売されたトヨタ2000GTが最初だ。固定式のフォグライトと小型のリトラクタブルライトの組み合わせは、いまみても斬新にみえる。

 その後1970年代のスーパーカーブームでは、ランボルギーニ カウンタックのような、低く構えたスタイリングとリトラクタブルライト、シザーズドアという出で立ちが人気に。リトラクタブルライトを採用する車種はスポーツカーを中心に増えていったが、実は、人気となったから採用が増えた、というよりも、スポーツカーならではの事情から採用が増えていったというのが正しい。

 当時のヘッドランプは、規格型しかなく、丸型か角形で、大きさが決まっており、また、低い位置だとライトの光が遠くまで届かないといった安全面の懸念から、あまり低い位置にヘッドランプを設置できなかった。位置を高くするにはフロントノーズを高くする必要があるが、空力性能を追求したいスポーツカーとしてはできるだけフロントノーズは低く抑えたい。展開することで位置を高くできるリトラクタブルヘッドライトは、保安上の制限と空力性能の追求の両立させるための策だったのだ。

スポーツ走行には不向きだとわかったこと、そして衝突安全性の問題から、採用されなくなった

 リトラクタブル式を代表するモデルとして真っ先に思い浮かべるのは、やはりマツダ「RX-7」だろう。1978年に登場したSA22型から、2002年に生産終了となるFD3S型に至るまで、すべてリトラクタブル式であった。

 トヨタMR-2もリトラクタブル式というイメージが強いが、1999年に後継モデルのMR-Sが登場することでリトラクタブル式は廃止。初代NSX(NA1)や三菱GTO(Z15A/Z16A)も、初期モデルはリトラクタブル式だったが、NSXは2001年に、GTOは1993年のマイナーチェンジで固定式に変更された。これらの例から、1990年代〜2000年代始め頃にかけてリトラクタブル式は徐々に採用されなくなったことがわかる。

 リトラクタブルヘッドライトが採用されなくなった理由としては、ひとつは、メカニズムが複雑になるため重量がかさんでハンドリングの悪化につながる、ということがある。また格納されているときは空気抵抗が低く抑えられるものの、展開時には空気抵抗が大きくなる。スポーツカーのために開発されたリトラクタブルヘッドライトだったが、皮肉にもスポーツ走行には不向きだったのだ。また、万が一の事故の際、展開したヘッドライトが歩行者を傷つける突起物になる可能性があるという、歩行者保護の安全性にも問題があった。

 実はリトラクタブル式の機構そのものは、いまでも禁止されてはいない(ただ、保安基準を遵守することが難しい)。しかしながら、異形ヘッドランプやプロジェクター式が普及してきたことで、デザインの自由度やコスト面でもメリットが少ないリトラクタブル式は、みるみる衰退していってしまった。

初代ホンダNSXもリトラクタブル式のイメージが強いだろう。しかし2001年のマイナーチェンジで固定式に変更された(画像は1999年のNSX-T)
初代ホンダNSXもリトラクタブル式のイメージが強いだろう。しかし2001年のマイナーチェンジで固定式に変更された(画像は1999年のNSX-T)

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