買取と下取りを比べたときに、高い査定額が出るのは買取というイメージが強いと思う。しかし、昨今は下取り額が買取金額を上回るケースも出てきた。背景には、コロナ禍以降、在庫不足が顕著となった中古車市場がある。下取りが本当に高くなっているのか、自動車販売市場の変化を軸に考えていきたい。
文/佐々木 亘、写真/トヨタ、Adobe Stock(アイキャッチ画像:tatsushi@Adobe Stock)
■買取と下取りの明確な違いを再確認
買取と下取り、どちらもユーザーのクルマを業者が引き取る行為になる。一般的に前者は大手の中古車買取・販売業者が行うもので、後者はメーカー系自動車ディーラーの行うものを指す。
両者の大きな違いは、ユーザーがクルマを手放すタイミングだ。
買取は、お店にクルマを持って行った「その時」の価格が査定価格となるが、下取りの場合は購入したクルマの「納車時」に想定される価格が査定価格となる。買取は「今」、下取りは「未来」のクルマの価値を指しているのだ。
買取の方がクルマの鮮度が高いため、提示額が高くなるケースが多かった。また、ディーラーよりも中古車専門業者の方が、販路が広く販売で有利である。
仕入れたクルマを高額で売れる地域を見つけやすいため、買取額の方が下取り額よりも高くなることが多いのだ。
しっかりとした理由があり、高価買取が行われてきたのだが、この通例が最近は通用しなくなってきている。
■在庫確保のため高騰する下取り額
コロナ禍以降、新車の供給不足や中古車需要の高まりを受けて、最近の中古車市場は商品不足の状態が続いている。特に新車の供給不足はディーラーを悩ます深刻な問題だ。
そこで、新車で利益が出ないならと中古車販売に力を入れるディーラーが増えてきた。
ディーラーが中古車の販売量を増やすため取り掛かったのが在庫量の確保だ。多くのメーカー系ディーラーでは、自社で下取りしたクルマを清掃・整備して商品化している。
つまり、中古車展示場の在庫量を増やすためには、まず下取りに入ってくるクルマを増やさなければならない。
そこで、より多くのユーザーが下取りを利用してくれるように、査定額を大幅に引き上げている。数年前よりもプラス10万円~20万円の査定額を出すのは当たり前。
新車の値引きが年々厳しくなっているという背景もあり、値引きの代わりとして下取り額をアップするという手法も多い。
ディーラーの下取り強化の動きは活発だ。買取よりも半年、あるいは1年以上遅れてクルマを手放す契約にも関わらず、買取金額を下取り額が上回るケースが頻発している。
今なら、購入したクルマと愛車を納車時に入れ替える「下取り」を利用する価値は高いのだ。
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