発見されたら最期! 「潜水艦」対「潜水艦」は沈黙の戦い

発見されたら最期! 「潜水艦」対「潜水艦」は沈黙の戦い

 先ごろ映画『沈黙の艦隊』が公開された。原作はかわぐちかいじ氏のマンガで、ご存じの方も多いことだろう。そこでは潜水艦同士の戦闘が描かれているが、実際の「潜水艦」対「潜水艦」の戦闘はどのように展開されるのだろうか。最新の潜水艦の戦いを見ていくことにする。

文・イラスト/坂本 明、写真/海上自衛隊、US Navy

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■「音」こそ潜水艦の目であり、攻撃の要

 潜水艦の主任務とはなんだろうか。海上自衛隊や米英海軍などでは、多数の潜水艦が運用されている。大きさや動力の違い(原子力と通常動力)はあるものの、そのほとんどは攻撃型の潜水艦であり、敵の水上艦艇や潜水艦への攻撃が主任務となる。

 なかでも海中に潜む敵潜水艦を同じ海中で攻撃するのは、攻撃型潜水艦の独壇場である。互いに可能な限り音を出さないように、密かに航行する一方で、相手の出す音を少しでも聞き出して情報を集める。

 海中で潜水艦が使用できるセンサーといえばソナーだけで、戦闘時に使用できるのは、主に音を拾うパッシブ・ソナーのみとなる。基本的には向こうからやって来る音だけを頼りに、相手の方位や遠い近いといった距離を、水測員(ソナー員)の経験やデータ(ソナーからのデータ、蓄積した海洋データやソナー信号の分析など)に基づいて推定するのである。

センサーが捕らえた音波情報のスペクトラム分析を行なうアメリカ海軍のロサンゼルス級攻撃型原潜の操作員(PHOTO/US NAVY)
センサーが捕らえた音波情報のスペクトラム分析を行なうアメリカ海軍のロサンゼルス級攻撃型原潜の操作員(PHOTO/US NAVY)

 ソナーには、パッシブ・ソナーのほかに、もうひとつアクティブ・ソナーがある。こちらは、パッシブ・ソナーよりも相手の方位や位置を正確に測定できるが、音を発して測定するため、こちらの存在を相手に知らせてしまうことになる。

 潜水艦にとって隠密性こそ最大の武器であり、自分が生き残る唯一の手段である。だからこそ、戦闘時は息をひそめ、パッシブ・ソナーで相手を探るわけだが、攻撃に移る直前、魚雷発射のために精密測定が必要な場合には、アクティブ・ソナーが使われることがある。

 潜水艦同士の戦闘では、なんとか相手の位置や方位、航程を予測して、攻撃に有利な位置につこうと努力する。これは相手を具体的に見ることができない潜水艦戦闘独特のものであろう。

 ではどのように戦闘が展開されていくのだろうか。

 まず、戦闘体勢下で自艦の水測員が敵潜水艦を探知したとする。このとき、その潜水艦を攻撃するかどうかを決定するのは艦長の決断にかかっている。敵に攻撃を加えるということは、みずからの存在を明らかにして艦を危険に晒すことにもなるので、慎重に決断する必要がある。

 もし攻撃すると決定したら、水測員の操作するソナーで収集される情報に基づいて相手の動きを把握しなければならない。そのために行われるのが目標動静解析(Target Motion Analysis:TMA)だ。

次ページは : ■いかに敵艦の動きを正確に知るか

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