車名を決めるのは、自動車メーカーの開発チームの中でも、クルマの良し悪しを大きく決める作業の一つだ。中には渾身の一作という車名もあることだろう。そんな、名前は同じでも全く別のクルマに大変身したクルマを見ていこう。
文/佐々木 亘、画像/ベストカー編集部 ほか
■シャリオの縮小版からアウトランダーの縮小版になったRVR
現在、アーバンスタイルのクロスオーバーSUVとして発売されているRVR。同社のアウトランダーをコンパクトにしたような見た目で、どう見てもSUVなのだが、RVRの系譜を辿っていくと、元々は全く違うクルマなのがわかる。
初代RVRが登場したのは1991年のこと。当時シャリオ(のちのシャリオグランディス)という今風に言えば7人乗りのミニバンがあり、この短縮版がRVRだった。SUVというよりもワゴンが少しクロカンチックになったクルマだ。
前席ドアはヒンジタイプで、後席は助手席側に備わるスライドドアから乗降する。
ランエボに搭載された4G63型ターボエンジン(デチューン版)を搭載した「スポーツギア」や、車体天井の半分を電動収納できるオープンギアなどの、一風変わったラインナップを持っている遊び心溢れるクルマだった。
1997年に登場した2代目RVRまでは、初代と同じワゴンタイプ。しかし、2003年に姿を消すことに。そこから8年ぶりに現在のRVRとして、名前が復活する。
姿かたちが変わっても、遊び心のあるクルマづくりは、RVRという名前によって引き継がれているようだ。現在も違和感なく使われているRVRの名前。名前自体が三菱らしさを持ち、ひとつのブランドになっているようだ。
■火の玉ボーイはどこへいった? コンパクトOEMモデルに次々と採用されたジャスティ
スバル・ジャスティと言えば、現在ダイハツ・トールのOEM供給モデルである。トヨタ・ルーミーとも姉妹関係にある、スバル唯一のコンパクトトールワゴンだ。しかし、ジャスティの名前は、遥か昔から存在する。
ジャスティが登場したのは1984年のこと軽自動車のレックスをベースにした、リッターカーとしてデビューした。FFベースでパートタイム4WDの選択もできる、スバルらしいコンパクトハッチである。
翌年には「火の玉ボーイ」というキャッチコピーがつけられる、3気筒1.2LのSOHC9バルブのツインキャブエンジン仕様を追加した。
そんなジャスティは1994年に生産を終える。日本でのリッターカー市場からスバルが手を引き、スバル製のジャスティは、1世代で終わりを迎える。
しかし、1994年には欧州市場でスズキ・カルタスのOEM車をジャスティとして販売。さらに2003年にはスズキ・スイフト(初代)のOEM、2007年にはダイハツ・ブーンのOEM供給を受け、欧州市場でジャスティは販売を続ける。
ジャストサイズのコンパクトカーだから「ジャスティ」だ。ベース車両が変わろうとも、その名前は常に丁度よく、ぴったりとハマっていたのかもしれない。
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