考えてみればけっこう死活問題!? 超小型モビリティのドアに窓がないのはナゼ?

■一番のハードルはコスト

 さて、超小型モビリティには利便性や航続距離の絡みでドアウィンドウが付いていないということはわかったが、航続距離に関しては技術革新で今後延びる可能性もあるし、イマイチ釈然としない。

 そこでおなじみ国沢光宏氏にもう少し、突っ込んだところまでその事情を聞いてみた!!

「まず、根本的に窓ガラスの曇りを取るにはエアコンに限らず、デフロスターでもいい」と国沢氏。ただ、

「いずれにしても曇りを取るために200~300W程度の電力を消費するワケで、それがリーフの場合と超小型モビリティではバッテリーの容量を考えても明らかに航続距離などに与える影響の比率が違うよね」。

 さらにそれより重要な点があると国沢氏は続ける。

「一番問題になってくるのがコスト。最近では家庭用で4~5万円の低価格エアコンも売ってるけど、クルマ用となればハナシは別。クルマ用のエアコンは信頼性やサイズの問題もあり、少なくとも10万円くらいはかかることになる」

 国沢氏の指摘するとおり、超小型モビリティは二輪車とクルマの間を埋める存在として手軽さも重要。手軽さを実現するには求めやすい価格にすることはマスト要件で“安くしないと売れない”カテゴリーというわけだ。

 調べてみるとコムスの最廉価グレード「B・COMベーシック」の価格は66万8000円。対してダイハツミライースの最廉価グレードDは74万5000円。エアコン装着で+10万円を見込むとこの価格差は逆転。

「大して価格が変わらないなら軽自動車買うよなあ」という声も上がりそうだ!! このあたりに超小型モビリティの価格設定の難しさが見え隠れする。

 ただ、窓はなくとも風雨を凌ぐ工夫を試みているメーカーもあると国沢氏。

「東京モーターショーにも出展していたホンダの「MC-β」のドア付近にはバイザーのようなものも付いていて、空気の入れ換えはできる半面、上から水が入りづらい形状になっている」

 こうしたちょっとした工夫で、快適性が増せば、「窓がなくてもいい!!」と思えるかも!?

写真はオプションのキャンバスドア(サイドバイザー付き)を装着したコムス
写真はオプションのキャンバスドア(サイドバイザー付き)を装着したコムス

■まとめ

 超小型モビリティにドアウィンドウがない一番の理由はコストだ。曇り止め装置としてエアコンを付けると価格上、軽自動車との差別化が図りにくいという点だ。今後普及のため二輪車、四輪車双方の“いいとこ取り”をうまく実現し、庶民の足になれるか? 今回のテーマは単に窓の有無を探るだけでなく、この乗り物の将来性を考えさせられるものだった!!

●超小型モビリティに窓がない4大ポイント!
01)窓を付けるには曇り止め装置が必要
02)曇り止めのためのエアコンの装備は航続距離や重量面で不利
03)また、エアコン装着には+10万円ほどの価格増が伴う
04)乗り降りなど利便性を損なう

●結論:超小型モビリティにドアウィンドウが付く可能性は今後もほぼない!

(ここまでの写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

(※編集部追記:10年前の「超小型モビリティ」ではウィンドウもエアコンも難しかったが、2021年からトヨタが個人向けリースを開始したC+pod(シーポッド)はウィンドウもあり、エアコンも付いている。ただし価格は160万円超。なかなか実験的な企画だが、はたして「超小型モビリティ」の未来はどういった方向で進むのか。興味がつきないし、もう10年後の2034年の記事も見てみたい)

【画像ギャラリー】トヨタ ホンダ 日産…各社「超小型モビリティ」の「窓事情」をギャラリーでチェック!(6枚)画像ギャラリー

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