大学の自動車部をご紹介するこの企画。今まで紹介してきた自動車部は郊外のキャンパスにガレージを構えるところが多かった。しかし、今回ご紹介する法政大学自動車部のガレージは、皇居にほど近い都会のど真ん中に存在するのだ!!
※本稿は2024年1月のものです
文/奥野大志、写真/大石博久
初出:『ベストカー』2024年2月26日号
■拠点は都内の一等地!!
自動車部といえば、多くの人が、ツナギ姿の大学生が油まみれでクルマの下に潜りこみ、整備している姿を想像しますよね。ガレージのあるキャンパスは郊外にあり、部員たちは天然のテストコースで運転技術向上に励んでいる……。拙者を含め、多くの読者がそんなイメージを持っているのではないでしょうか。
今回取材した法政大学は1880年(明治13年)に設立された、東京法学社をルーツとする総合大学。自動車部は皇居から1kmほどの都心にある市ヶ谷キャンパスで活動しています。
タワーマンションの集合体のようなキャンパスは超がつくほど未来的。近所には物々しい警備が行われている施設もあり、自動車部にとって、超絶アウェーな環境。一般的な自動車部のイメージと大きくかけ離れたロケーションです。
■試合の出場選手は投票制!?
インタビューに対応いただいたのは経営学部3年の小山航海(わたる)さん。取材時は渉外責任者で、令和6年度から主将を務める幹部メンバーです。
「部員数は22人で、活動日は週2日。火曜日と水曜日に富士見坂校舎の駐車場で活動しているほか、不定期で遠征し、ジムカーナやフィギュアの練習を行っています」(小山さん)
駐車場以外で自動車部が使用できる設備や車両は、少量の工具やタイヤなどが置ける倉庫と、試合車を保管する地下駐車場、それと大学所有の4トントラックがありますが、ガチでそれだけ。
大型工具を置けるスペースや、クルマを転がせるような空き地はなく、他大学と比べて、厳しい環境と言わざるを得ません。
「ビルのキャンパスは肩身が狭いというか、ちゃんと整備できる場所が欲しいと思いますね。ただ、アクセスはいいので、多摩や小金井キャンパスに通う部員も頑張って参加しています。一長一短ですね」(同)
現在の活動はというと、春からの新シーズンに向け、鋭意準備中。2023年に参加した競技は主に、学連のジムカーナとフィギュアの2つで、ダートトライアルは試合車のフロアに穴が開いて以来、出場していません。
また2022年まで、下級生の運転技術向上を目的に軽耐久に出場していましたが、2023年は習熟不足のため、ジムカーナ練習会に切り替えたそう。
「ダートラは入部した時には出てなかったので、5年くらいは出場していないと思います。クルマの準備ができないのが理由です。そのため、学連の総合杯に挑戦することはできませんが、全関東ジムカーナは団体優勝、全日本では団体入賞を目指しています」(同)
ユニークなのが試合に出場する選手の選考方法。部所有のクルマを使って同じコースを走り、速かった人が選手候補となりますが、2022年から部員全員による投票も行い、選考に加えています。最終的な選考結果はタイム通りになりましたが、一風変わった取り組みと言えるでしょう。
「自動車部の活動は整備や運転だけではなく、大学への書類の提出やサーキットの走行申し込み、部品の注文など、たくさんの仕事があります。部に対する貢献度というか、『この人のために整備をしたい』『この人に運転してもらいたい』という気持ちを大事にしたいと考え、投票という要素を加えました。
モータースポーツは選手だけで戦える競技ではないので、みんなが気持ちよく参加できることが大事だと思います」(同)
法大自動車部では近年、いろいろなことが変わってきていますが、その中心人物のひとりが小山さん。小山さんは今の時代に合わせて自動車部が変わっていく必要性を感じており、上下関係のルールに関しても、部の運営をより円滑に行うために、今後どうあるべきかを常に模索しています。
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