【緊急提言】暴走事故はドライバーだけの責任ではない!! 天才エンジニアが見抜くクルマが改善すべき点とは


■新技術への補助金よりもそれを使いこなすための指導をすべし

水野:未来の担い手、救世主としてEVだ、ハイブリッドだ自動運転だとマスコミや行政は調子づいているけど、「人の命が本当に新機構のなかで真剣に論議されているのか?」って。

 正直なところ、高性能車を多く開発してきた私が、誤操作や誤発進に対しどれほど神経をすり減らして、特別なペダル配置や形状、フェールセーフ機構などを開発していたか……正直私の心のなかは一年中、はらわたが煮えくりかえっているんですよ。

フェル:なるほど。

水野:モーターのメカニズムや特徴がよくわかっていない年寄りや女性にエコカー減税で何十万円もの補助金を出したり、地球環境を話すだけで、音もなく最大トルクが出るクルマの特徴や注意点や間違った時の危険性を認識させる啓蒙活動はほとんどせず、むしろ従来のクルマと何も変わらないような説明……。

フェル:昨今の事故は起きるべくして起きていると?

水野:そう。エコカー減税で補助金を出しているクルマたちがその根源となっているケースも多い。

フェル:ふうむ、国が補助金を出してECOだけを推進していたけど、同時に新技術を安全に使うための市場指導も必要なのにほとんどやってこなかった。

水野:そういうこと。もう一度言うけど、モーターって音もなく発進時に最大トルクが出るから、間違って急発進した時に、日常使っている20kg以下程度の踏力でブレーキを踏んだって止めにくい。

 さらに先ほど言ったように、室内を広くするために、FR車に比較して内側にオフセットされて取り付けられているFF車のアクセルとブレーキペダルの配置。

フェル:今のクルマってペダルをオフセットしないということがウリになっていますものね、マツダのデミオとか。

R35 GT-Rはペダルが吊り下げ式。ハイパフォーマンススポーツカーといえばオルガンペダルという意識が強いが、安全性を考えてあえて吊り下げ式にしたという

水野:で、以前からずっと危惧していたことが現実になってしまった。モノ凄い発進駆動力のあるR35GT-Rを開発した時に、ブレーキペダルの配置やストローク範囲と合わせてなぜオルガン式ペダルでなく、吊り下げ式ペダルにしたかの理由のひとつもこれ。

 ブレーキペダル誤操作でアクセルも同時に共踏みした場合、吊り下げだと踏んでいくと、つま先が空振りしてくれる場合もあるのに対し、オルガン式はかかと部分が固定されているのでどこでも踏めてしまうから。

フェル:ペダルってオルガン方式のほうが危ないのですか?

水野:危ないか危なくないかはレイアウトとの関係やストローク量や操作力とのバランスなどで一概には言えないけど……。

フェル:でもマツダではコストのかかるオルガンペダルの採用をウリにしていますよ。

水野:うん、それは、雑誌の記事や欧州高級車のまねだけでなくもっと真剣に研究をしてほしい。

 オルガンペダルの欠点は「踏んだ時にペダル面と靴底に滑りが必ず発生するために微妙な操作がしづらいこと」と「ペダル面の角度と靴底の角度が違うので、かかと角度を保持するためにアキレス腱付近の筋肉の負担が大きいこと」。

 要は微妙な操作がしづらく、アキレス腱付近が疲労すること。

 だから微妙なアクセル操作性が大事なレースカーはプッシュ・レバー方式を使うし、R35GT-Rでは踏んだ時にペダル面と靴底の滑りがまったくなく、ストロークできて、微妙な操作がしやすい軌跡を実現するために、あえて吊り下げ式を採用したの。

 確かにオルガン式は高級感があって見栄えはいいけど、要はそのクルマの必要条件からペダル方式は決定するもので「全車オルガン式にしてお金をかけたからいいペダルです」とは私には言えません。

 強力な駆動力に対して、微妙なアクセル操作が必要で、ブレーキとの共踏み誤操作リスクの低減を考えてGT-Rは吊り下げ式を使ったの。

■「先の先を読んだ仕事」をエンジニアはすべきだ

水野:発進駆動力が大きいクルマだから私はそこまで神経を遣い、操作や安全設計をやってきました。だからGT-Rの暴走事故って起きていないはずだし、サーキット走行などでもエンジンコントロールは容易なはずです。

フェル:確かに。

水野:それがクルマを設計する者の先の先を読んだ仕事。パワーのあるクルマを設計するということは人の命や操作性に対し、エンジニアがどこまでユーザーに配慮や思いやりを持つか。

フェル:そこまで気を遣っていたということですね。

2007年のGT-R発表時からぶれない水野さんの開発者としての姿勢。より安全に、より快適に、そんなクルマ作りは今後も続くはずだ

水野:そう。だから電動車は、発進時トルクを5.00〜6.0kgmくらいに抑える「ノーマル」と、「パワー」というふたつのモードが切り替えられるスイッチをつけるべきなのよ。それは法規でそう決めるべきだとも思う。

 また、現在は視力と認知症の検査だけしかない高齢者免許の更新にも「足の検査項目」を追加することが絶対必要!

 これはペダル位置を捉える「足の位置認知機能と急ブレーキ時の踏力確保のための脚力の検査」。

 すごく簡単ですぐできること、つまり「免許試験場にある階段に30cm間隔のガムテープを張って、この間隔のなかで階段を5段以上登れる試験」を追加するだけ。

フェル:だとするとクルマだけでなく制度にも責任があると。

水野:もちろん、制度そのものに責任ある改定をしてほしいのと、メーカーもモーター搭載車を作る際、ペダル配置についてもメーカーの技術的配慮を付け加えることが大切だと思う。

(次回、後編は7/23に掲載予定)

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