世界でもトップクラスの災害大国日本。特に地震での被害が多いのだが、大手も含め、各自動車保険会社は地震による被害は保険対象外としている。だが勿論無いわけではない。今回は、もしもの時に必要な自動車保険の地震特約を解説しよう。
文/佐々木 亘、写真:Adobe Stock(トップ画像=Cenk@Adobe Stock)
■地震による車の損害は補償にも限界がある
地震による損害は、自動車保険の免責事項です。免責とは責任を逃れるという意味で、保険会社が保険金の支払わなくてもいい事象という意味になります。
地震の他には、津波・噴火によるクルマへの被害があっても、基本的には免責です。
この3つの自然災害はでは、クルマへの補償が発生しない(車両保険が使えない)ということを理解しておきましょう。
ただ、近年の地震による被害は深刻で、マイカーを失い、日々の生活に支障をきたす方も大勢います。
このような事象の解決方法の一つとして、損害保険会社では、地震特約(保険会社により名称に違いがあります)を新設するようになりました。
地震特約は車両保険に加入している契約者が付帯できるものです。クルマが地震により全損となった場合、50万円(車両保険金額が50万円以下の場合は、保険金額に準じた金額)が支払われます。
地震特約は、完全補償ではなくお見舞金のような役割になっており、車両金額が50万円のクルマでも500万円の車でも支払われるのは50万円です。
また、マイホームの火災保険でクルマを直せないかという質問をよく受けます。具体的には、「ガレージで保管していたクルマが地震によって倒壊した家屋の下敷きになった」というケースです。
一見すると家の地震保険で補償されそうなケースですが、残念ながら火災保険にある地震保険で、クルマは補償対象の家財に該当しないため補償されません。
現状、地震に対する備えを保険で行うとしても、限界があるというのが実情です。
■全損の定義が違うため保険金支払いが難しい現実
自動車保険における「全損」の定義は、事故の場合と地震被害場合で大きく違います。これは、事故と地震被害では、保険金の支払いを必要とするスピードが大きく変わるためです。
事故の場合、代車の用意や代替交通手段の提供によって、クルマを失ったユーザーは不利な状況を回避することができます。
代わりの手段があり、保険金支払いまでに時間がかかっても、ユーザーの不利益は大きくならないという考え方です。
支払う保険金の額も大きくなるため、保険会社としても慎重な調査や判断をする必要があります。
そのため、車両保険で設定された補償金額を超える損傷だったり、車が物理的に修理不能となったりした場合に全損扱いをすると定められているのです。
全損と認定されるまでには、業者での見積もりや交渉などが行われます。
一方、地震による被害での保険金支払いは、見舞金であり、別の移動手段をユーザー自身が探し、手に入れるための足掛かりになるお金です。支払いにはスピードが求められます。
そのため、地震被害での全損認定では、修理費用の算出を基本的に行いません。
津波で流され見つからない、運転席座面を超えて浸水した、クルマの主要部分が大きく損壊し修理不能と判断できるといったように、事前に細かく損害の程度が定められています。
これに該当すれば、即支払いを行うのが自動車保険の地震特約です。支払保険金を50万円までと上限設定することにより、このスピードが実現できます。
補償の目的が違うため、全損の定義も異なります。これが、事故と自然災害で受けられる補償の違いにもつながるのです。
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