ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はロールスロイス ドーン(2015年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2018年1月10日号に掲載した記事の再録版となります)
PHOTO/平野 学
■このクルマは町内会にお薦めしたい。御神輿よりドーンを買うべし!!
来年夏頃に登場すると噂の新型ジムニーを買うべきか、それとも現行型のジムニーワイドにするべきか悩んでいたら、担当の飯干さんから電話があった。
「明日の試乗車はロールスロイスのドーンです!」
ロールスロイスだと? ジムニーのことを考えている時にあまりにもふさわしくない車名。
「ジムニーはコミコミ200万円を切るだろうか?」と考えている自分が、あまりにも小物に思えてしまう衝撃の報告だった!
そして今、ロールスロイスドーンを目の前にしている自分がいる。
水色と白の2トーンカラーがこんなにも映えるクルマがほかにあるだろうか。実車を見た瞬間、「これはクルマではなくクルーザーだ」と思った。
ドーンはクルマだが、クルマとは違うところにいる。本来、クルマはこうでなければならないとも思う。クルマは、いつのまにか大衆にへりくだるものになってしまった。
自動車雑誌もそうだ。本当はハードカバーの百科事典のようなものであるべきなのだ。コンビニで簡単に立ち読みできるベストカーなんかぜんぜんダメ!
そんなベストカーがロールスロイスを取り上げること自体が失礼だ。しかも私に乗せるなんて判断ミスもいいところだ。
前置きが長くなったが、さらに前置きは続く。
私はドーンに乗りながら、「ぶつけたら伝説になるだろうな。テレビで叩かれるだろうな。『テリー伊藤、3740万円のロールスロイスでコーナーを曲がり切れずに全損!』そんなニュースに私はどんな顔をしてコメントすればいいんだろうな」と、そんなことばかり考えていた。
運転しながらそんな精神状態になるクルマはめったにない。ロールスロイスはやはりそんじょそこらのクルマとは違うのだ。
しかし、そのいっぽうでロールスロイスをありがたがってばかりいてもしょうがないよな、とも思う。私の人生の信条は「ナメてかかって真面目にやれ」だ。既存の価値観はどんどん変えていかなければならない。
レンタルオフィスやカーシェアなんて、20年前には誰も考えなかったサービスだ。
たぶん、カーシェアを思いついた人はクルマ好きではないはずだし、洋服が好きではないから重さで買い取る古着屋さんなどという発想が出てくる。
今、TVは若い人にナメられている。なぜナメられるかというと、昔は一家に一台だったTVが、今はスマホで見られるような存在になったからだ。TVが小さくなり、自分の手の内に入っている。ロールスロイスもそういう感覚でみたほうが面白いと私は思う。
かつて、30代の頃だったか、私はロールスロイスを所有していたことがある。ジョン・レノンのサイケデリックに塗装された黄色いファントムに感化されて、自分のシルバーシャドウIIをドクロ模様にしていたのだ。
ジョン・レノンへの憧れがそうさせたのだが、クリエイターとしてロールスロイスの伝統や伝説に呑み込まれてはいけないという意識もあったはずだ。
そして、60代になった今もその気持ちは変わらない。
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