BEVは今買ったほうがいい?もうちょい待ったほうがいい?補助金いくらもらえるの??

BEVは今買ったほうがいい?もうちょい待ったほうがいい?補助金いくらもらえるの??

 軽規格、かつ(補助金込みで)200万以下という現実的な価格で、2022年6月に登場したB(バッテリー)EVの「サクラ/eKクロスEV」は、BEV購入のハードルを大きく下げた。BEVが多少身近なものとなり、また、2024 年度のEV補助金の内容も発表されたことで、「BEVに乗っている人も増えてきたことだし、補助金が手厚いうちに買っておいたほうがいいかな」と考えている人も少なくないと思う。

 ただ、少なくともいまのBEV(とその環境)は、使う人を選ぶ。BEVの購入を検討している人に読んでほしい、2024年のBEV補助金の内容と、BEVの使い勝手についてご紹介しよう。

文:吉川賢一
写真:NISSAN

2024年度のBEV補助金は85万円、軽EVやPHEVは55万円

 2024年3月に経済産業省が発表した、来年度(2024年度)のEV補助金(令和5年度補正予算)は、バッテリーEVは85万円、軽バッテリーEVは55万円、PHEVは55万円、FCEVには255万円だ。4年間は所有することなどの条件がつくが、たとえばアリアB6(659万円)なら、実質的な車両本体価格は574万円に、サクラ(254万円)の場合だと199万円になる。

 さらに2024年度は、新たな補助金の算定方法が設けられる。「自動車分野のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に必要な価値」に基づき、高い評価を得た自動車メーカーの車種は、高い補助額が算定されるというもので、具体的には、(電費や航続距離など)製品性能の向上、充電インフラ整備やアフターサービス体制、人材育成の確保、リユースリサイクルといったライフサイクル全体でのCO2排出削減、災害時の地域との連携などで実績をあげれば、高評価につながる。

 たとえば日産は、「電気自動車を活用した脱炭素社会実現及び災害対策強化に関する連携協定」として、地方自治体と協力体制を築き、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を進めているが、こうした活動が企業の評価に繋がる。日産は、すでに200件を超える自治体と協力体制を築いているそうだ。

 また地方自治体による補助金も大きい。もっとも補助が手厚い東京都では、給電機能有の対象車両の場合45万円の補助金に加えて、特定の自動車メーカーのBEVであれば上乗せ補助がある(トヨタ、レクサス、ホンダだと+5万円、日産、三菱、テスラだと+10万円など)が、家庭用太陽光発電などの再生可能エネルギー電力を導入する場合は、さらに+30万円も上乗せされる(令和5年度分は2024年3月29日(金)で締め切り)。

 この東京都の補助事例はちょっと凄すぎるが、他の地方自治体でも、VtoH設備導入補助などはある。

日産「アリア」。2024年3月に大幅に値上げされ、標準車B6の価格はこれまでよりも120万100円も高い、659万100円となった
日産「アリア」。2024年3月に大幅に値上げされ、標準車B6の価格はこれまでよりも120万100円も高い、659万100円となった
リーフも、2022年12月に大幅値上げをしている。40kWhでは約37万円の値上げ、60kWhのXでは525万と、100万円以上も値上がりした
リーフも、2022年12月に大幅値上げをしている。40kWhでは約37万円の値上げ、60kWhのXでは525万と、100万円以上も値上がりした
日産「サクラ」もリーフと同時期に値上がりしたが、10万~16万程度の値上げでとどまった。現在のサクラの価格は、税込み254万円(X)。政府補助金を考慮すれば199万円になる
日産「サクラ」もリーフと同時期に値上がりしたが、10万~16万程度の値上げでとどまった。現在のサクラの価格は、税込み254万円(X)。政府補助金を考慮すれば199万円になる

いまのBEVの性能と充電環境では、便利とはいいがたい

 このように、手厚い補助金が用意されているBEVだが、既存のBEVの性能と現在の国内の充電環境を考えれば、「(後述するケースを除いては)BEVはいまが買い時」だとは、筆者は思わない。

 筆者自身、1年ほどBEV(日産初代リーフ)を所有し、セカンドカーもなく、その一台のみで過ごしていたことがあるが、終始不便さを感じていた。当時は、日産のZESP-2を契約していれば、2000円という月額料金で充電し放題(いまは違う)といういい時代で、かつ充電中は日産ディーラーでフリードリンクを楽しめるとあり、当時収入の少なかった(いまもだが)筆者としては大変ありがたかった。ガソリン車が古く感じるほど、BEVの乗り味は快適で、BEVの魅力も十分に知っているつもりだが、あの時感じた不便さを考えると、(ファーストカーとしては)もう乗りたくないと筆者は思ってしまう。初代リーフだけでなく、ここ数年で、アリアやサクラ、bZ4X、メルセデスEQSなど、最新鋭のBEVもいくつか試乗させてもらったが、その経験を通しても、全力でBEVをお薦めすることはとてもできない。

 BEVは、30分急速充電(急速充電設備はバッテリーへの負荷を減らすため、また充電待ちにクルマによる渋滞緩和のため、30分までしか利用できない)しても、航続可能距離が100%回復するわけではない。以前、某国産メーカーの最新BEVで、北陸地方を300km弱ロングドライブする、という機会があった。WLTCモードでの航続可能距離は500km超えという十分な性能に思えるBEVであり、高い静粛性と軽快な走り、そしてすっきりとした乗り心地で、「いいクルマ感」がひしひしと伝わってくるクルマだったが、途中、30kW急速充電器で30分間の充電をした際、計算では、30kW×0.5h=15kWは蓄えられるはずだが、回復したのは13.3kWh、走行距離に直すと約93km程度(電費は7.0km/kWhで算出)という状況。寒さのためにエアコンをつければ、420kmあった走行残距離は、340kmに減少してしまった。

 昨今は急速充電設備も、90kW~100kWクラスの高速充電へと更新され始めてはいるが、現状は、都市部にある自動車ディーラーが中心であり、コンビニエンスストアや地方の道の駅の急速充電器は、30kWや50kWクラスのまま。5分で満タンにできる内燃機関車との利便性の差は歴然だ。

2009年に初披露された日産初代「リーフ」。航続距離は160km、当初の販売価格は376万円からで、発売年である2010年の政府補助金は77万円だったので、実質299万円で購入可能だった
2009年に初披露された日産初代「リーフ」。航続距離は160km、当初の販売価格は376万円からで、発売年である2010年の政府補助金は77万円だったので、実質299万円で購入可能だった

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