2023年にフルモデルチェンジを行い、ラグジュアリーミニバンとして不動の人気を築いているアルファード。その人気を裏付けるように盗難車ワーストランキング1位となっているが、その手口と行き先について自動車生活ジャーナリストが切り込んだ!
文/加藤久美子、写真/ベストカーWeb編集部、トヨタ、AdobeStock
■損保協会では盗難ワースト2位のアルファードだが……
こちらは警察庁生活安全課が2024年3月1日に公開した「車名別盗難台数の状況」である。盗難台数ランキングのデータは、もうひとつ日本損害保険協会が毎年発表しているデータがあるが、こちらは「盗難と認められて車両保険を支払った台数」のランキングである。よって、車両保険付保率が低い軽トラックやスカイラインなどの旧車系はランキングに入ってこない。
警察庁のデータ(認知件数)では1位はアルファードで700台となっているが、一方、損保協会のデータではアルファードは2位の364台。車両保険の付保率ももちろん関係してくるが、保険会社の知人に聞いたところによればアルファードの車両保険付帯率は新しい車種で7~8割とのこと。
実際に保険金が支払われた台数は700台中364台と5割強だ。盗まれた台数の保険金詐欺が疑われる事案もわりとあるそうで、その場合は当然だが車両保険は支払われない。
2023年にアルファードは700台が盗まれており、2022年の2倍強の台数となる。なぜアルファードの盗難がこんなにも増えているのか? そしてどのような手口で盗まれているのだろうか?
■アルファード盗難の手口はどのようなものなのか?
筆者はこれまでTV番組の取材でアルファードが盗まれていく様子を録画した防犯カメラの映像を何度も見ているが、レクサスやランドクルーザー同様、手口のほとんどは「CANインベーダー」と考えられる。
ひと昔前に激増した「リレーアタック」については防盗対策が比較的簡単(電子キーの電波を遮断する金属のケースなどで鍵を保管するなど)であるため、オーナー側の対策も進んだのであろう。近年は激減している。
ところが、CANインベーダーはエンジンを切って駐車しているクルマであってもごく簡単に解錠、エンジン始動ができる手口だ。フロントバンパーをずらしてヘッドライトの下部にあるECUコネクタを外し、特殊な機器をCANに接続する。
わずか3~4分の作業でエンジンもかかり、各種の操作が可能になる。この「特殊な機器」は海外サイトで車種に応じて販売されている。つい先日、3年ぶりに販売サイトに問い合わせしたが、40アルファード用もランドクルーザー300用も用意があるとのことだった。
■盗難に遭ったアルファードの行き先とは?
では、盗まれたアルファードはどこに行くのか? これについては、ランドクルーザーやレクサスとほぼ同じエリアと考えられる。
アルファードのような豪華ミニバンはアメリカや欧州の多くの国では不人気であり、アメリカには並行輸入車に対して「25年ルール」(製造年月日から丸25年経過した車両はアメリカの保安基準であるFMVSSの規制を受けずにアメリカに輸入ができる)という非常に厳格な輸入規則が存在する。
また、日本で盗まれた旧車のスポーツモデルの多くがアメリカに行っていることから、近年は25年を経過していても盗難車かどうかの審査が個々の港にて行われている。
ということで、盗難されたアルファードの向かう先はアジア、中東、もしくは近年中古車輸入のルールが大幅に緩和されたオーストラリアの可能性が高いとみられる。アジアのなかでも中国、香港はアルファードの人気が異常なくらい高く、香港はオーストラリアともども日本と同じ左側通行&右ハンドル車が主体となるため、国内で運転する場合も都合がいい。
また、中国やモンゴルなどを経由してロシアに入っている可能性もある。ロシアはつい最近まで日本発中古輸入車の仕向け地としてダントツだった。
が、ウクライナ侵攻への経済制裁がさらに強化された2023年夏以降はハイブリッド車、EV、排気量1.9Lを超える車両は輸入禁止の措置が取られている。多くのアルファードが規制対象となるため、盗まれたアルファードが闇ルートでロシアに入っている可能性もあるだろう。
■実際に新型アルファードの防盗性能は上がっているのか?
最後に、盗難激増のアルファードに関して、メーカーのトヨタではどのような対策を取っているのだろうか? 巷では「40アルファードは防盗対策が強化されている」と聞く機会も多いが……。
この質問に対し、トヨタ自動車広報部からは「おたずねの件ですが、内容の性質上、公に申し上げられることは特にございませんのでご容赦ください。ただし、一般論で申しますと新型の車両についてはカーセキュリティの性能は(もちろん)向上させております。」との回答だった。
一般的に新型車が世に出て2年後くらいからその車種の盗難が増えるといわれている。その間に窃盗団は新型車を購入したり、レンタルしたり、Anycaでシェアしたりして新型車の解析を行う。
が、実際に海外の販売サイトではすでに2023~2024年型の最新モデルを対象にしたCANインベーダーやキープログラマーが販売されているので、発売されたばかりの車種であっても油断はできない。
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