バッテリーEVなどを購入した際にもらえる、国のクリーンエネルギー自動車(CEV)補助金制度の2024年度補助額が明らかになった。2024年度は、新たな補助金の算定方法が設けられ、高い評価を得た自動車メーカーの車種は、高い補助額が算定される。
新制度の導入により、国内の整備拠点が限られる輸入車への補助額は2023年度よりも概ね下がることとなったが、ただ、それでも日本は輸入車を優遇しすぎていると思う。24年4月以降の具体的な補助額を確認しながら、考察しよう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、SUBARU、VW、VOLVO、ヒョンデ
最大85万円、軽EVやPHEVは最大55万円
2024年3月に経済産業省が発表した2024年度のEV補助金は、バッテリーEVは最大85万円、軽バッテリーEVは最大55万円、PHEVは最大55万円、FCEVには最大255万円、という内容。4年間は所有することなどの条件がつくが、たとえばアリアB6(659万円)なら、実質的な車両本体価格は574万円に、サクラ(254万円)の場合だと199万円になる。
最大額をみるとおおよそ2023年度と同程度の内容の補助額にみえるが、2024年度は、新たな補助金の算定方法が設けられた。脱炭素社会実現に向けた社会や産業構造の変革「グリーントランスフォーメーション(GX)」を強力に進めるため、高い評価を得た自動車メーカーの車種は、高い補助額が算定されるというもので、具体的には、(電費や航続距離など)製品性能の向上、充電インフラ整備やアフターサービス体制、人材育成の確保、リユースリサイクルといったライフサイクル全体でのCO2排出削減、災害時の地域との連携などで実績をあげたメーカーのクルマは補助金が有利となるというもの。この新ルールによって、これまで同額の補助金枠だったバッテリーEVも、メーカー間で差がつくことになった。
充電インフラ整備などに強い国産メーカーは満額が多く、その他はほぼ下落
主要なバッテリーEVの2024年度の補助額を以下にまとめた。たとえば、日産「リーフ」の場合、2023年度はリーフNISMOが58万円だったが、2024年度は全グレードが85万円の対象に、日産「アリア」はNISMO B9 e-4ORCEのみ68万円だが、その他のグレードは満額の85万円だ。またスバル「ソルテラ」は、85万円から68万円に下降している。兄弟車のトヨタ「bZ4X」は85万円と前年と同じ額だが、差がついたのには、充電インフラ整備の面などで、スバルは、トヨタや日産、ホンダなどに比べて不足しているためと考えられる。
一方、海外メーカー車は、フォルクスワーゲン、ボルボ、プジョー、BYD、ヒョンデなどが、軒並み下落。特にBYDとヒョンデの下落は大きく、65万円から一気に35~45万円へとダウンした。新ルールに照らし合わせると、充電インフラ整備やアフターサービス体制、人材育成の確保といった面が懸念されたのだろう。ただ、テスラのモデル3だけは、補助金が65万円から65~85万円へと上昇した。航続距離706kmを誇るモデル3ロングレンジ車が85万円枠となったためだ。
こうしてみると、充電インフラ整備や災害の連携など、幅広く活動している国産メーカーへは補助金を満額支給し、対応がそこまで追い付いていない国産車メーカーや輸入車メーカーは補助金を減額している様子がよくわかる。
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