マツダがMX-30ロータリーEVというPHEVを発売したが、そうはいってもロータリーエンジンは発電用。かつての13Bや20Bに思いを馳せるマツダファンは、駆動用のロータリーエンジンを搭載した、スポーツカーの復活を望む声も多い。そこで、今回はロータリーエンジン最強といわれる、ユーノスコスモ20Bエンジン搭載車にスポットを当ててみたい。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、マツダ
■よくぞ作ってくれた20Bロータリーエンジン搭載のユーノスコスモ
ロータリーエンジンを搭載したクルマに乗ったことありますか? なかでも2ローターの13Bを搭載したRX-7やRX-8ではなく、やはり3ローターの20Bターボは、一度は乗っておきたかったという声も多い。
その世界初の3ローター20Bターボを搭載したのが1990年4月、マツダが「ユーノスチャンネル」のフラッグシップとして開発した2ドアラグジュアリークーペ、ユーノスコスモである。ボディサイズは全長4815×全幅1795×1305という、ワイド&ローフォルムは、コスモスポーツをリスペクトしたもの。
2ローターの13B型ターボが最高出力230ps/最大トルク30.0kgmを発生していたのに対し、3ローターの20B型ターボは最高出力280ps/最大トルク41.0kgmを発生。
当時、この3ローターはレシプロのV型12気筒エンジンにも匹敵するスムーズさがあるといわれたが、低速域から軽やかにスムーズに回るあの感触は、現代のEV、モーターが回る印象に近いかもしれない。
そのいっぽうで燃費はリッター2~3Kmという、とんでもない極悪燃費車と言われていた。ちなみに3ローターのツインターボエンジンを積む「20B タイプE CCS」のカタログ燃費は6.1km/L。
実際に、3ローターのユーノスコスモオーナーに話を聞いたことがあるが、「街乗りで4〜5km/Lくらい。流れのよいバイパスだと6km/L台、高速道路を80km/h巡航だと7km/L台。一度だけ8km/Lを記録したことがありましたが、基本的にはどんなによくても7km/L台ですね。巷でいわれている1〜2km/L台は、ありえないです」とのこと。
当初、3ローターの20B型は333psで開発されていたが、運輸省(当時)の指導、280ps自主規制により280psに抑えられたという逸話を持つ。組み合わされたトランスミッションは、全グレードとも4速AT。
価格は、R32型日産 スカイラインGT-Rが445万円だった時代に20Bの上級グレードが465万円。2ローターの13Bでも370万円。高すぎて、当時は見向きもされなかった、という記憶が残る。
インテリアは今でも通用しそうなほど秀逸。フラッグシップ・クーペにふさわしい高級感たっぷりの本革やウッドパネルが多用され、「20BタイプS CCS」には、タッチパネル式マルチインフォメーションディスプレイの元祖ともいえる世界初のGPSカーナビを搭載。とはいえ、当時は利用できる衛星の数が少なかったため、東名高速を走っているのに太平洋を走行中と表示されることもあったとか。
■20Bロータリーエンジン搭載車はなんと880万円で1台しか流通していない
今振り返ってみると、当時は3ロータリーエンジンもさほど注目されず、燃費の悪さや価格の高さにより販売は低迷。1995年8月には生産終了となり、翌1996年6月には在庫分も完売し、完全に販売終了となった。
大抵、ネオクラシックカーのほとんどは、値上がりする前に買っておけばよかったと後悔することが多いが、ユーノスコスモはどうなのだろうか?
今から3年前にユーノスコスモの中古車を調査した時は流通台数は10台、価格帯は約158万~約358万円。そのうち、20Bエンジン搭載車は約310万~約324万円で、流通台数は約4台。
しかし2024年4月現在、ユーノスコスモの流通台数は5台。価格帯は199万~880万円。13Bは199万~200万円で100万円ほどの高騰レベル。しかし、20Bエンジン搭載車の流通台数は1台、しかも価格は880万円(1993年式タイプS、2.7万㎞)と高騰していた。
哀しいことだが、これではもう乗ることもできないだろう。絶望ともいえる20Bエンジン搭載車の中古車相場に驚愕!
■ユーノス コスモ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4815mm×1795mm×1305mm
・ホイールベース:2750mm
・車重:1640kg
・エンジン:直列3ローター ツインターボ、1962cc
・最高出力:280ps/6500rpm
・最大トルク:41.0kgm/3000rpm
・燃費:6.1km/L(10モード)
・価格:530万円(1990年式20 B タイプE CCS)
コメント
コメントの使い方