クルマに音楽は不可欠。いまやスマホ派の人も多いだろうが、過去にはクルマにCDプレイヤーやらMDプレイヤーが搭載されてきた。しかしその元祖は「8トラック(通称8トラ=ハットラ)」と呼ばれるカセットテープの一種。こいつが実にぐっとくるシロモノだったのよ!
文/ベストカーWeb編集部、写真/Wikipedia、Adobestock(トップ画像=Edward Stephens@Adobe Stock)
■車内に好きな音楽を持ち込めた史上初のメディア!
クルマのエンタメの主役といえば、もちろん音楽。その元祖はもちろんラジオだが、その後さまざまなメディアが登場しては消えていった。
今やスマホでアップルミュージックやスポティファイを聴く人も多いだろうが、1970年代に一世を風靡したのが「8トラック(通称8トラ=ハットラ)」というメディアだ。
この8トラ、小型電卓くらいのサイズの箱(縦136mm×横102mm×厚さ22mm)の中にループ状の(始点と終点を繋いだ)磁気テープが収まっていて、プレイヤーにガチャンと挿し込むと、収録された音楽をエンドレスで聞くことができた。
しかもすごいのは、1/4インチ(約6.35mm)という幅に8つの信号を並列に記録できたこと。左右2チャンネルのステレオ再生なら、4つのトラック(楽曲)が並行して収録できたのだ。
意味がよく分からんかもしれんが、4つの局があるラジオのようなものだ。8トラ自体は常に4つの音源を流していて、再生ヘッドの位置をずらすことで(ラジオの選曲をするように)再生する曲を切り替えた。1トラックあたり4曲(くらいが多かった)入っていれば、計16曲が聴けたことになる。
この8トラ、スナックや旅館のカラオケ音源としても大活躍したのだが、当時のヤングにとっては車内音楽の再生装置として絶大な人気を誇った。受け身の媒体だったラジオに対し、8トラックは「クルマの中で好きな曲が聴ける」人類史上初の媒体だったからだ(長距離トラックのドライバーにも愛された)。
■車内が8トラカセットであふれるほどかさ張る(泣)
ただし難点もあった。まずはカサばること。クルマのグローブボックスに入るのはせいぜい2~3本で、車内はすぐ8トラックテープでいっぱいになった。加えてテープなのに再生専用で、録音できない点も不満を募らせた。
実際、こうした理由が没落へと繋がる。8トラックを駆逐したのが、コンパクトカセット(通称カセットテープ)だ。
実は1960年代からカセットテープは存在したのだが(1962年にオランダのフィリップスが規格化し1965年に特許を無償解放した)、狭いテープ幅の扱いが難しく、当初は会議の音声記録用程度にしか使われなかった。
それが1960年末の技術革新によってステレオによる録音&再生が可能となり、しかも表と裏に別の信号が記録できるとあって、カセットテープの人気は爆発した。
こうして8トラは姿を消していくのだが、お気に入りの曲をクルマに持ち込むという8トラの果たした役割は絶大だった。
いまやドライブミュージックもスマホの時代だが、かつては車内をデカいカセットで満杯にしていたクルマ好きがいたことも忘れないでほしい!
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