■素材なども吟味して安定した品質と価格を提供
テイン中国工場で製造されるサスペンションにはもちろん、日本にも毎週ピストンロッドを送っていて、横浜本社工場で組み立てられる単筒式モデルにもテイン中国工場で作られたピストンロッドが使われているのだ。
組み合わせられるシェルケースも鉄パイプから自社工場内で加工。シェルケース表面にはネジが切られ、ここにブラケットやスプリングシートを回し入れていく。通常は金属表面を刃物で削り取ってネジ山にしていく。ところがテインでは金属表面を強力な力で挟み込んで金属を寄せるようにしてネジ山にしていく転造加工を採用している。
こうすることで削り取った鉄を捨てる必要がなくなりゴミを減らすことができる。さらに製造も速くなるなどメリットが大きく、近年この方法に切り替えたという。
組み合わせられるブラケットは車種ごとのマウントが溶接されているが、こちらはすべて機械によって自動的に行なわれる。人間に比べてクオリティの均一化が図れるメリットがある。
そして、それらはすべて横浜工場と同じ粉体塗装が行なわれ、シェルケースにはフライパンと同じフッ素系の表面処理が行なわれる。この処理の耐久性には定評があり、雪国ではテインの車高調は融雪剤によるダメージが少なく、もっとも固着しにくいと言われている。
そして、内部パーツが組み立てられるのはクリーンルーム。しかも、ピストンバルブに組み合わせるシムはオートメーション化されたシステムで配置され、組み間違いも起きないのだ。
クリーンルーム内は手術室と同等の清浄度に管理されている。わずかなゴミが入り込むことで減衰力が設計通りに発生できなかったり、そういったものがオイル漏れの原因になることから厳密に管理されている。ここまで管理されたサスペンション組立工場は筆者も見たことも聞いたこともない。
■全数チェックで守るクオリティ
完成後はすべての製品を減衰力テスターに掛けてチェックしている。全数チェックなのも見逃せない。
梱包時も最終的に重さで管理されていて、付属物の入れ忘れなどを発見できるようになっている。そういった厳密な管理の元、中国工場は24時間体制の2交代制で稼働して生産している。
そして、テインが目指すものは中国で安価に作ったサスペンションを日本で売りさばこうということではない。現在の為替レートの関係や、中国も徐々に人件費が高騰化していて、以前ほど安く作れるわけではないのだ。
「我々は地産地消を念頭に掲げています。中国で仕入れた材料を使って、中国で製造し、中国国内で販売しています。現在は中国国内消費は製造の40%ですが、それを90%にまで引き上げたいと思っています。
現在中国は人件費が高騰していますが、それはすなわちこちらの方々が裕福になるということです。そうなければクルマをカスタマイズする人も増えていくので、むしろ僕らとしてはウエルカムなことです。」と藤本専務。
中国内で製造から消費まですれば現在の不安定な為替レートによる影響も少なくなる。地元では雇用が生まれ、ビジネスとして回っていく。経済的に成長すれば、チューニングという文化も広まっていく。そして、そこにはまた大きなマーケットができる。そういった大きなチューニング文化の普及という目標のもとに中国工場を設立しているのだ。
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