なぜ、プリウスは2つのバッテリーを設定しているのか?


ル・マンカーにみるトヨタとリチウムの話

text/段 純恵

 トヨタがリチウムイオンバッテリー採用に慎重なワケですか? 現在、世界耐久選手権のハイブリッドマシンは蓄電装置にキャパシタを使ってますが、トヨタは独自のリチウムイオンバッテリーの開発もずっと進めています。

 一昨年モノ自体の完成はそう遠くないと聞きましたが、なぜ未だに導入されないのか、その理由は安全性の確認に尽きます。石橋を叩くなんてヤワなもんではありません。岩盤に突き刺さるくらい深く打ち込んだ杭を、第三者機関にデータ公開して二重三重に調査させるくらいの慎重さで確認しています。その調査もぼちぼち完了らしいですけどね。

 その『慎重居士』メーカーが量産新型車にリチウムバッテリーを搭載するということは、安全性に社内が納得、ゴーサインが出たということでしょう。ニッケル水素バッテリー搭載のグレードを残すのは、ニッケル水素にもまだ進化の余地があるからで、旧型に比べ蓄電効率は、かなり向上しているはずです。

 リチウム車のほうが価格が高いのは、コスト面での問題と、リチウム車に上級クラスの装備を付けたからですね。

 あと、新型プリウスすべてにリチウムバッテリーを載せるとなると、難しい部分も出てくるのでは。予想生産台数を考えれば、製造ラインの改造が必要になるかもしれない。

 万が一、問題が出て全車対象のリコールなんてことになった場合、対処が追いつかなくなるかもしれない。ニッケルバッテリーに関わってきた協力会社は仕事が激減し、困った事態になるかもしれない。そういった『大人の事情』もあるのかもしれませんね。

ニッケル水素を売り続けるワケ

 まず、なぜ新型プリウスで本格的にリチウムイオンバッテリーを採用したか? だが、これはWECマシン同様、市販車においても「念には念を入れ」の信頼性が確保できたからだろう。

 にも関わらず、ニッケル水素グレードを設定している理由は、

  • ①ニッケル水素バッテリーの蓄電効率が向上しているため
  • ②製造ラインの問題
  • ③リコール対応のリスク
  • ④ニッケル水素を取り巻く産業的な問題

 この4つだろう。

 ではこの先トヨタは、どんなバッテリー戦略を採っていくのだろうか? トヨタの姿勢をみていると、ニッケル水素バッテリーの採用車をなくしていくという可能性は、短期的に見ればかなり低いだろう。

 ただ、いっぽうで、これだけ台数の出る基幹車種のプリウスにリチウムイオンバッテリーを採用したということは、今後、他の車種にも展開していく可能性は充分ある。

 とすれば、考えられるのは、車種による棲み分け。比較的上級のHVにはリチウムイオンバッテリーを使い、ベーシックな大衆車にはニッケル水素で対応するなどの戦略だ。

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