円安方向へ振れ続ける為替相場や、落ち着かない世界情勢を背景にして、ガソリン価格の高騰が続いている。ガソリン価格には地域差があるが、ここ最近は東北地方の安さが際立つ。なぜ東北はガソリンが安いのだろうか。調べていくと安さを生み出すワケには、少し心配な点があった。
文:佐々木 亘/写真:Adobestock(トビラ写真=U4@Adobestock)
■全国平均を下回り続ける東北のガソリン価格
石油情報センターによる、5月7日時点での給油所小売価格調査では、全国平均のレギュラーガソリン価格が175円なのに対し、東北地方の平均価格は173円となっている。
都道府県別に見ていくと、岩手・宮城・岡山だけが160円台である。最も安いのが、岩手県の168.5円、次いで宮城県の169.1円、岡山県の169.2円だ。
逆に最も高い価格を付けるのが長野県の184.3円で、次点には山形県が182.7円で入る。山形と宮城は隣同士の東北なのに、なんと13.6円もの価格差があるのだ。
また、東北地方で全国平均価格を下回っているのは、岩手・宮城・青森・秋田である。山形と福島は、全国平均以上の価格となっていた。
ここまで見てみると、東北地方におけるガソリン価格の安さを牽引するのは、岩手と宮城ということがわかる。では、一体なぜここまで大きな差が生まれるのだろうか。
■安さのカギは製油所と競争にあった
東北地方に供給されるガソリンは、多くが仙台港にある製油所から運ばれてくる。製油所から近ければ近いほど輸送コストが抑えられるため、仙台港に近い宮城県と岩手県の平均価格が低いというわけだ。
しかし、単に製油所から近いというだけでは、ガソリン価格が安い地域にはならない。この条件に加えて、ガソリンスタンドがガソリン以外のモノで儲けられているかも、重要なポイントになってくる。
東北地方では、ガソリン売り上げのほかに、冬季には灯油の売り上げやスタッドレスタイヤの売り上げなどが積み重なっていく。そのため冬季になると、レギュラーガソリン平均小売価格は、夏にも増して北の地域の方が下がりやすい
一方、冬用タイヤや灯油の売り上げが少ない南の地域では、利益の大半をガソリンの売り上げに頼る部分が大きく、ガソリン価格は総じて高いままなのだ。
さらに、価格低下に拍車をかけるのが、ガソリンスタンド同士の激しい競争である。特に、宮城・岩手は全国的なガソリンスタンドチェーンが、大型店舗を建設しやすく、出店もしやすい。
なので隣の店舗よりも1円でも安く売らなければお客さんが来ないという状況になり、安売りに拍車がかかる。特に宮城県は、競争による価格低下が顕著な地域だ。
■安売りの地「宮城」では困りごとも発生中?
宮城県は、県内のガソリン価格にも大きく差が出る。
ガソリンの需要が高まっている地域には、軒並み大手のガソリンスタンドチェーンが出店。大手の規模の力に対して、地元のスタンドでは、常連さんやお得意様を作ろうと、独自のクーポンや会員制度を使って、顧客の囲い込みを図っている。
結果として、同じ宮城県内でも、価格の高いところと安いところの差が、1リットル当たり10円近くまで広がることも多い。
宮城県の中でも、ガソリン小売価格が安い地域にいる筆者は、県内の観光に出かける際はもちろん、県外へクルマで旅行をするといった時に、他県のガソリン価格の高さに驚くばかりだ。基本的には居住地の近くで満タンにガソリンを入れて、出先の給油は避けている。
地域ごとのガソリン価格の差を確認しておくと、クルマでのお出かけに行きやすい地域と、そうではない地域が分かってくる。値上げラッシュで家計も苦しい昨今だからこそ、クルマでの旅行にはガソリン価格の安い宮城や岩手を選ぶのもいいと思う。
一方で、宮城県内では極端な安売りにより潰れてしまうガソリンスタンドも多くある。ガソリンはライフラインの一つであり、生活を支えるものだ。
安易に安価を歓迎するだけでは、生活に困る地域も出てくるだろう。売る側も買う側も困らない価格設定が、今後はさらに求められていくはずだ。
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