■全部同じと思うなかれ、思った以上にいろいろな種類があるAT車
国内を走るほとんどのクルマがAT車である現代。ところが、この「AT」や「オートマ」という用語の意味を、きちんと説明できる人は案外少ないのではないだろうか。
■ATとは?
「AT」とはオートマチックトランスミッション(Automatic Transmission)の略で、エンジンから出力された駆動力をタイヤへと伝える変速機(トランスミッション)を文字どおり自動化したもの。MT(マニュアルトランスミッション)車のようなギアチェンジやクラッチ操作が必要ないため運転に集中でき、誰にでも変速時のショックがないスムーズな走りを可能としている。
また、ひと口に「AT」といっても、いくつかの種類があるというのも知っておきたいポイント。なかでも最も一般的なのが「ステップAT」だ。
「トルクコンバーター」という流体と遊星歯車機構(プラネタリーギア)によってパワーを伝達する構造のため「トルコン式AT」とも言われる「ステップAT」は、1速、2速……というMT車と同じ段階的なギヤセットを持つのがその特徴。
従来は3~5速が一般的だったが、近年では静寂性と燃費の向上を図るため多段化が進み、8速や9速のものも登場してきている。
■ATはCVTだけじゃない
また、国内のコンパクトカーや軽自動車などでよく用いられている「AT」が「CVT」といわれるタイプだ。「CVT」(コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション)とは日本語で言うところの「無段変速機」のこと。
向かい合ったふたつの可変プーリーをベルトでつなぐ構造で、連続的に無段階で変速比を変更することができるのがその特徴だ。
「CVT」は最適な減速比へと無段階で変速できるため、効率のいいエンジンの回転数を維持しやすく、燃費効率に優れるというメリットがある。
これら以外にもMT車の変速機そのままに自動化した「AMT」(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)や、ふたつのクラッチを搭載することで「AMT」での変速時のタイムラグを短縮した「DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)」といったタイプもある。
ひと口に「AT」といってもその種類はさまざま。それぞれのタイプの特徴まで知っておけば、クルマ好きからも一目置かれる……かもしれない!?
■何となく知っているけど説明しにくい!? トルクとパワーの違い
クルマ用語のなかには同じように扱われがちながら、実は意味合いが異なるというものがある。カタログの諸元表などにも記載されている「パワー(出力)」と「トルク」も、そんな用語ではないだろうか。
このふたつの用語は、いずれもエンジンの性能を示す言葉ではあるが、それぞれの違いをわかりやすく説明するとなると案外難しいもの。
まず「トルク」はエンジンが発生する回転力を示すもので、「kgm」という単位で表されることが多い。トルクをわかりやすく説明するのによく用いられる自転車を例にとると、ペダルを踏み込む力がトルクであり、これが大きいほど加速性能が高いといえる。
いっぽうの「パワー」はトルクに回転数をかけたもので、単位には「ps」や「馬力」が用いられる。この値が大きいほどスピードが出やすくなるため、他の条件が同じであれば、クルマの最高速はパワーで決まることになる。
ちなみに1馬力は馬一頭の力……ではなく、75㎏のおもりを1秒間に1m持ち上げる力を示しており、その単位である「ps」は、ドイツ語で馬の力を意味する「Pferdestarke」を略したものだ。
なお、クルマ好きには昔からなじみのある「kgm」や「ps」、「馬力」といった単位は、国内ルールであるJIS表示を基本としているが、最近ではSI(国際単位系)に基づき、パワーを「kW」、トルクを「Nm」と表すことが一般的。自動車メーカー各社のカタログなどでは、両方が併記されていることが多い。
クルマの話をする時には必ず必要となるさまざまな用語。その意味合いをよく知らずに使っているものがもしあるなら、一度きちんと調べておくと、後々恥をかかずにすむかもしれない。
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