そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも、何年経ってもみんなが覚えている……そんなクルマを取り上げるこの企画。だがこのクルマは6年間で7万台以上売れているから「たくさん売れたわけじゃない」とはいえないかも……。今回は事実上最後のパイクカーとなった、どこか懐かしい箱SUV、日産 ラシーンだ!!
※本稿は2024年5月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2024年6月10日号
■気負わず乗れるタイムレスSUV
可愛さ、懐かしさともにこれくらいがちょうどいいのかも? それが正式パイクカーじゃないけどパイクカー系のなかでは最も安心して乗れるコンパクトSUV、ラシーンだ。方位進路を測る羅針盤から車名を付けた面白デザインカーで、当時の日産ホームページ名にも使われ、中身は当時の7代目サニー。
そもそもは平成5年の東京モーターショーに参考出品されたクルマで、それがウケて商品化。オマケに製造担当は1980年代にBe-1やパオを作った高田工業。
由来的には完全にエスカルゴ、フィガロに続くパイクカー第5弾とも言えるが、デザインはそれほどレトロじゃないし、台数も期間も限定ではなく、1994年から6年間で実に7万台以上も作られたカタログモデル。
小沢の勝手な想像によると半量産体制が取れるようになった高田工業による普及型パイクカーかもしれずで、いろんな意味で狙い目だ。
事実、初期物は30年目を迎えるが最終型は2000年式と比較的新しめだし、中身は7代目サニーなのでABSにエアバッグも付いている。さらに今回撮影車をお借りしたこの手に強いガレージコヌマのアベさんによると「エンジン、ブレーキはまず壊れません」とのこと。リスキーな輸入車とは違い、安心なのよ。
■四駆もあり! 雪道や悪路にも意外に強い
なにより実車を見てほしい。借り出したのは1997年式のラシーン タイプIIの4WDで走行距離13万キロ超え。それだけにヤレはヒドいと思いきや見た目に塗装割れや樹脂割れはない。自慢の1.5Lエンジンも一発でかかって、兄貴分パイクカーのパオより安心だ。
同時にいま見てもサイズ、使い勝手的な魅力は多く、4.2mを切るコンパクトな全長に完全5ナンバーの全幅1.7m切りは扱いやすい。
全高もイマドキSUVと比べて低い1.5m強で余裕で立体駐車場にも入るし、ガチでライズ/ロッキーと比べたくなる扱いやすさだ。ついでにいうと最低地上高も170mmと意外にできている。
かたやデザインはここが評価の分かれ目だが、わざとらしいレトロっぽさなし。そこはパオやフィガロと大きく違うところで、キュートでクラシックな丸目ヘッドライトとか、装飾過多なメッキグリルなどは一切使われてない。前後バンパーやルーフレールもマットなシルバーで塗られているがピカピカしすぎてない。
テールランプもシンプルだし、多少オモチャっぽいのはタレ目風なメッキ枠付きのヘッドライトぐらい。後はシンプル過ぎるくらいの箱型デザイン。それでいてどこかキテレツムードが漂う絶妙な出来映え。
インテリアも同様で基本超フラットパネルで全然レトロじゃない。シンプルなダッシュボード樹脂もほとんどヤレてないし、痛んでるのはせいぜいカバーしてあるステアリングぐらい。
シンプルな3連メーターは可愛いというよりモダンですらあるし、ザックリとしたファブリックで覆われたシートもフツーにオシャレ。イマドキの家具屋に置いてあってもおかしくない。
かたや唯一物足りないのは走りで、当初エンジンはたった105psの1.5L直4しか選べず、1.2トン前後のSUVとしては非力。オマケに四駆も選べ、山雪道を走ることを考えると後期ラシーンフォルザの2Lぐらいがほしいところ。
四駆も後期はセンターデフ+ビスカスのシステムが選べるので走破性はいい。使えて可愛いヤツなのよ。
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