トヨタは2019年4月から全国に先駆けて東京地区で販社の統合に着手。それから4カ月が経過するが、全店舗でトヨタの全車種を扱うようになったことで販社そのもの、車種にどんな影響がているのか?
年間100日以上販社に足を運び販社の情報に詳しい遠藤徹氏が現場の生の声を通して、トヨタの販売チャンネル統合から4カ月の変化をレポートする。
文:遠藤徹/写真:TOYOTA
値引き競争ができない!?
今年4月、トヨタの東京地区のメーカー資本店4社が統合し、全トヨタブランド車を扱うようになった。4カ月経過した今、各店舗にとってメリット、デメリットの両方が表面化しつつある。
メリットは1店舗あたりの扱い車が増え、トータルの販売台数が増加していることだ。また従来のようなトヨタ系列店同士の競合による値引き競争がなくなり、販社の収益が向上している。
いっぽうデメリットは販売台数の小さい小規模店は値引き幅を縮小して売らざるを得ず、競争に負ければ他店舗に吸収統合される心配があることだ。
なぜ値引き競争ができないか?
従来別会社だったから同じトヨタ系列店同士の販売競争で1台でも多く売ろうと値引き競争が頻繁に発生していた。それが同じ会社になったので、各車種の値引き幅が1本化されるようになった。
同じユーザーに対する商談の交渉権は最初に関わった店舗の営業マンが優先権を得る。他の店舗に出向き商談をしようとすると、その情報が全社にコンピュータのオンラインで伝わり管理されているので、できない仕組みになっている。
店舗間の競争は激化
カローラ店やネッツ店はトヨタ店、トヨペット店で扱っていたクラウンを扱えるようになったので、従来よりも儲かるようになっている。クラウン1台売るとヴィッツやパッソの10台ぶんに相当する収益が上がるといわれ、カローラ店やネッツ店は喜んでいる。
トヨタ店とトヨペット店もコンパクトクラスのヴィッツ、パッソが扱えるようになり、クラウンなど上級車ユーザーの複数保有がし易くなるといった側面もある。
その代わり各店舗の営業マンは一挙に扱うモデル数が増え、覚えるのが大変といった事情もある。
大きい店舗は有利で小さい店舗は不利という噂に対して某モビリティ東京の営業マンは、「東京地区は主要幹線道路沿いに店舗が集中している地域が多い。比較的店構えの大きい元トヨタ店とトヨペット店は営業マンが多くアフターケアのサービス工場の設備もしっかりしているから販売台数を稼ぎやすく収益性はいいがカローラ店やネッツ店は小規模店が多く、収益性は良くないので、統合される確率が高い」、とコメントする。
小規模店が大規模店に統合されれば、小規模店のスタッフの多くは吸収する大規模店に移動させられるが、成績の悪い営業マンはやめさせられる運命になるかも知れない。
したがって値引き競争はなくなっても店舗間の販売競争は続くことになる。
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