パワーウィンドウって怖いです……知っておくべき[特性]と[事故防止策]

パワーウィンドウって怖いです……知っておくべき[特性]と[事故防止策]

 エアコン、パワステ、パワーウィンドウはかつて「高級車の証」「フル装備」などと呼ばれたが、今や当たり前の装備となった。このうちパワーウィンドウは、「便利な半面、非常に危険なもの」でもあることは知ってますよね?

文:山口卓也/写真:トヨタ、マツダ、写真AC

■パワーウィンドウのスイッチは改善されたが……

「パワーウィンドウって怖いです……」知っておくべきその特性と事故防止策
現在は、引き上げ式が主流に。この方式なら、肘が当たってもウィンドウが上方向に作動してしまうといったリスクが少なくなる

 パワーウィンドウの誤操作によって子どもの指や首が挟まれるという重大事故はかなり以前から今日まで起こっており、つい先日も2歳の小児がパワーウィンドウに挟まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 パワーウィンドウが世の中に登場した頃、当時は“押し下げ式スイッチ”が主流だった。つまり、スイッチの前側を押すか後ろ側を押すかでガラスの上下する方向を変えていたのだ。

 しかし、この方法では子どもが窓から乗り出そうとドアのひじ掛けに足をかけると、そこにあるスイッチを誤って押し下げてしまいウィンドウに挟まれてしまう事故が起こる。

 そこで1985年、マツダの6代目ファミリアでは “引き上げ式スイッチ”を初採用。これは、スイッチの凹みに指をかけて引き上げればウィンドウが上がり、押し下げればウィンドウが下がるという現在のスタンダード方式である。

 この方式の採用のためにさまざまなテストが行われ、当時北米で流行っていた女性の“つけ爪”にも配慮し、男性社員が現物を実装してまで検証したという。

 そんな安全性を最優先に考えられた“引き上げ式スイッチ”なのになぜ事故は起こるのか……。

■事故の多くは運転者による操作で起こる!

 “引き上げ式スイッチ”であっても、子どもがいたずらで誤操作すれば挟み込みは起こる。

 だが、挟み込み事故の大半は運転者の大人が手元のスイッチを操作し、後部座席にいる子どもの状況をしっかりと把握せずに後部座席ウィンドウを閉めてしまうことで起こっている。

 こんな事故を防ぐために気をつけるべきは次の3つ。

■6歳未満の子どもを乗車させる時にはチャイルドシートを正しく使う!

 道路交通法 第71条には「自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であって、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない」とあり、6歳未満の子どもにチャイルドシートは必須。

 また、身長140cm未満の場合は6歳以上であってもチャイルドシートの使用が推奨される。これは大人の体格に達していない子どもが通常のシートベルトを使用すると、本来の鎖骨の中心付近ではなく腹部にベルトがかかることになり非常に危険なためだ。

 さらに重要なことは、「できるだけ助手席の後部など、運転席から確認しやすい場所にチャイルドシートを設置する」ことと、「きちんと子どもが固定されている」ことの確認!

■運転席からの操作前には声がけ+子どもの様子を目で確認してから!

 具体的には「窓を閉めるよ! 窓から離れて!」と声をかけ、子どもが窓から離れていることを「見て」確認すること。

■運転席側にある“ロック機能”を使う習慣を!

 オンにしておくと後部座席からは窓の開閉が行えない“ロック機能”を使い、後部座席の子どもが操作できないようにする。

 そしてもちろん、子どもを残して車外に出るなどは、“ほんの少しの時間であっても”絶対にしてはならないことだ。

■自車のパワーウィンドウのパワーと機能は把握しておく!

「パワーウィンドウって怖いです……」知っておくべきその特性と事故防止策
写真のように子どもがリアウィンドウから身を乗り出している光景を目にしたことがある人は多いはず。この状態でウィンドウが誤作動したら子どもの力では止めることは不可能なのだ

 実は2017年2月、JAFはパワーウィンドウのテストを行っている。そのテスト項目は次の3つ。

■挟み込み防止機能の有無
■挟み込み防止機能が付いている場合、スイッチを引き続けた時の挟み込み防止機能の作動有無
■スイッチを引き続けた時の窓の閉まる力を計測(計測は、ガラスと窓枠に測定器を取り付けた)

 パワーウィンドウの閉まる力は「大根やごぼうもばっさり切るほど」と言われるが、「そもそも、私のクルマには挟み込み防止機能がついているから大丈夫!」と思うなかれ。

 テストによると、挟み込み防止機能はすべてのクルマに付いているものではなく、付いてはいるが運転席ウィンドウのみ装備、また子どもの細い指ではセンサーが感知しない場合も多いという検証結果も出た。

 そして、「閉まりかけたウィンドウを8歳男児、30代女性、50代男性がそれぞれ片手と両手で止めることができるか?」というテストでは、8歳男児では片手・両手で不可、30代女性では両手のみ可、50代男性では片手・両手で可(片手では閉めるのが精一杯)となった。

 しかし、これは「閉めることがわかっている」場合であり、いきなり閉まり始めると50代男性であっても難しいだろう。50代の筆者も「オレ、止められるのかな?」と思ったので自車でテストしてみた。

 結果は、手全体を使えば止められたが、軽自動車であっても指(第2関節付近)のみを挟まれると相当痛く、焦って開けようとしてさらに閉めてしまって(間違えてスイッチを上げてしまった)悶絶した……。

 この原稿を書いている今も痛いほど。もちろん、絶対に真似はしないでもらいたいが……。

 ちなみに、パワーウィンドウのパワーは軽自動車で25kgfあたり、ミニバンでは25〜35kgfといわれる。このパワーでかつけっこうなスピードで挟まれたら……数値以上のパワーで、小さな子どもの指なら骨折するレベル。凄まじいパワーであることは確かだ。

 しかも、あの細いパワーウィンドウの断面に一気にパワーがかかることを想像すれば、いかに危険なもののそばに子ども(やペット)を座らせているか? がわかるはず。

 愛する子ども(やペットも)を守るために、私たちができることを再認識したい。

【画像ギャラリー】パワーウィンドウの挟み込みを防ごう(7枚)画像ギャラリー

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