欧州を中心にBEV一辺倒の近未来に翳りが見えてきた。そうなると、やっぱりニッポンのお家芸であるハイブリッドが総合力で魅力的! そこで、トヨタ、日産、ホンダのストロングハイブリッドを三つ巴で徹底比較する!!
※本稿は2024年5月のものです
文:鈴木直也/写真:平野 学・トヨタ・ホンダ・日産
初出:『ベストカー』2024年6月26日号
■世界の目がハイブリッドに向き始めた?
ここ数年、ぼくは海外モーターショー取材に足繁く通っているんだけど、いつも興味深く観察しているのがクルマの電動化についての温度差だ。
読者の皆さんもニュースで目にすることが多いと思うけど、欧米(とくにヨーロッパ)は官民あげてBEVに前のめりだし、中国にいたっては国家が全面バックアップという状態。アジアの新興国ですら、下手すりゃ日本よりBEVの存在感は大きい。
しかし、これを「日本お得意のガラパゴス化」と捉えるのは、ちょっと短絡思考。なぜなら、ハイブリッド車をカウントすると、すでに日本は世界有数の電動車大国だからだ。
こんなことを言うと、「排ガスゼロのBEV以外はクリーンじゃない!」とか暴れる人がいるんだけど、すべてのクルマをイッキにBEV化するのは不可能なんだから、問題は「実際にCO2を減らした実績」だ。
で、その実績を見るとビックリ。日本は21世紀に入ってからの20年で自動車が排出するCO2を23%も減らしていて先進国中ダントツ。これに大きく貢献するのがハイブリッド車で、現在では年間150万台と登録車の36%を占める。
BEV一辺倒に翳りが見えた今、欧米で改めて見直されているのがPHEVとHEVだ。日経新聞は盛んに「日本は電動化で後れをとった」とか書いてたが、「前を走ってるように見えた欧米はじつは周回遅れでした」というオチだった。
■ハイブリッドはコスパの高い優れモノ!!
じゃあ、なんで日本だけがHEVの普及に成功したのかという問題だが、こりゃもう「お手頃価格で燃費優秀なHEVが揃ってる」ことに尽きる。
今回の取材で用意した3台。さすがにレクサス LBXは500万円級だが、他の2台は250万円前後で手に入るし、もっとお安いHEVをお望みならヤリスのベースモデルがほぼ200万円。この種の軽くてコンパクトな実用車が大量に売れることが、CO2削減というテーマではいちばん効果的だ。
2代目プリウスが爆発的にヒットしたのはもう20年前のことだけど、そこからライバルメーカーは「追いつき追い越せ」で熾烈な技術開発競争を繰り広げてきた。
さすがに20年も競争していると、かつてのようなトヨタハイブリッドの絶対優位は薄らいできたけど、おかげでこのセグメントの偏差値はグローバルで見てもダントツ優秀。コスパ、使い勝手、低CO2排出など、どれを買っても間違いないお買い得車揃いだと思う。
■各メーカー鎬を削ってハイブリッド技術を高める
老舗トヨタのハイブリッドのキモは、エンジンとモーターのトルクを合成する動力分割機構。機構が複雑で制御ソフトの開発も大変だが、現在でもエネルギー効率という点ではトップ。HEVと相性のいいバイポーラニッケル水素電池とのコンビネーションも抜群で、きわめて高い完成度を誇る。
ホンダはDCTを介した1モーターから、2モーターシリーズハイブリッド+直結機構のe:HEVにシステムを一新。ライバル2車と乗り比べるとドライバビリティの点でやや軽快さに欠ける印象があるが、直結機構の活きる高速燃費の優秀さは特筆モノ。コンパクトカーなのに疲れ知らずのロングツーリングが可能。
ノートのe-POWERシステムは最もシンプルな2モーターシリーズハイブリッドだが、その代わりライバルより5割以上容量が大きい1.5kWhのリチウム電池と高出力なインバーターが武器。
走りはきわめてBEVライクで、間髪をいれず立ち上がるトルクでキビキビとした加速感が痛快。この走りで電動車の魅力を啓蒙して、リーフやアリアにつなげようというコンセプトが明快だ。
2023年度決算で、トヨタもホンダも史上最高益を叩き出したけど、そこでHEVの果たした役割は極めて大。予想以上に時間がかかりそうなBEVへの移行期間には、こういう優秀なハイブリッドが絶対に必要ってことなのだ。
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