今でこそ高級ミニバンといえばアルファード/ヴェルファイアだが、この市場を開拓したのはエルグランドであった。バカ売れ中のアルヴェルだが、現行エルグランドは登場から10数年経過しており、差がついてしまうのは致し方ない部分も。エルグランドがフルモデルモデルチェンジした暁には失敗は許されないワケだだが、どうしたら再びスターに戻れるのか!?!?!?!
文:吉川賢一/写真:NISSAN、エムスリープロダクション
■全個体電池搭載だけでは、風向きを変えることはできない
一時期はモデル廃止の可能性もウワサされていたエルグランドだが、2023年のジャパンモビリティショーでは、次期型エルグランドを思わせるコンセプトカー「ハイパーツアラー」が登場。堂々としたそのスタイリングからは、「エルグランドをこれで終わらせてたまるか」という日産の覚悟のようなものも感じられた。おそらく次期型のプロジェクトは進んでいるのだろう。
ただ、このハイパーツアラーが次期エルグランドの姿だとすると、全個体電池搭載のバッテリーEVであるという点が気になる。全個体電池は、既存のリチウムイオンバッテリーよりもより多くの電力を蓄えられる上に、急速充電にも強く、劣化もしにくいことなどから、次世代バッテリーEVの電池として期待が高まっているが、技術的に課題が多く、まだ実用化には至っていない。
しかしながら、日産の電池開発関係者によると、日産はその課題を解決する目途を立てたとのこと。実際に日産は、同社の横浜工場内に全個体電池のパイロット生産ラインを構築中で、2024年度中には完成する計画だ。本当に次期エルグランドが全個体電池のバッテリーEVとなって登場することになれば、世界的に注目を集めることになるが、全個体電池の搭載は、あくまで既存のバッテリーEVに対しての進化であり、それだけではエルグランドのゲームチェンジャーには成り得ない。当初はコストも高くなるはずであり、ほかの電動パワートレインも用意することは必須だ。
■エクストレイルのVCターボe-POWERと、北米アルティマのVCターボで勝負!!
そこで期待したいのは、現行エクストレイルのe-POWERターボ(VC TURBO)の搭載だ。可変圧縮比システムが備わった1.5L直3エンジンで発電するe-POWERシステムは、2WD車はフロントに最高出力150kW(204PS)、最大トルク330Nmのハイパワーモーターを、e-4ORCE(4WD)車ではさらに、リヤに最高出力100kW(136PS)、最大トルク195Nmのモーターを搭載しており、その走りは爽快そのもの。
燃費もWLTCモード燃費で19.7km/Lと申し分なく(4WDは18.4km/L)、わずかだが、自動車税が安くなるという「おまけ」もつく(3.0L超~3.5L以下の57,000円から1.0L超~1.5L以下の34,500円)。ボディサイズが大きく、エクストレイルよりも200kg重たくなるエルグランドへポン乗せしても、十分に戦闘力はあるはずだ。
ただ、アルファードのグレード別の販売動向をみると、やはり現状は廉価なパワートレインも必須だと考えられる。アルファードは2.5L直4ガソリンエンジンのFF車(税込540万円~)が売れ筋グレード。日産のパワートレインでいうならば、北米アルティマ用の2.0L VCターボ(最大出力248hp、最大トルク370Nm)がいいだろう。
とにかくいまはエルグランドの勢いを取り戻すことが最優先事項。自動車メーカーとして、カーボンニュートラルに向き合わなければならないのはもちろんだが、メーカーとして存続できなければ意味がない。キックス、ノート(ノートオーラ)、エクストレイルはe-POWERのみだったが、セレナではガソリングレードを残せたのだから、エルグランドでもできるはずだ。
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