アテンザ改めマツダ6の販売が振るわない。
セダンとワゴンを合わせても2019年7月の販売台数は429台(セダン=231台、ワゴン=198台)と寂しい状況だ。
これは、近い車格の競合車――セダンであればトヨタ カムリは同期1950台――と比べても見劣りする数字で、ワゴン単体の台数はモデル末期のスバル アウトバック(同348台)にも負けている。
8月の台数も車種別ランキングのトップ50圏外(カムリは同38位の1282台)となり、台数は600台以下。新車効果は薄い。
マツダ6は、車名がアテンザだった2018年6月にマイナーチェンジを実施。マツダ6と改名した2019年7月には新たに2.5Lターボエンジン車を設定し、Gベクタリングコントロール(GVC)プラスを全車標準設定している。
マツダ6の“車としての評判”は総じて悪くない。いや、むしろ良く出来ているという評価が多いくらいだ。
では、なぜ車は良い(はず)なのに売れないのか? 競合車との比較も交えながら解説。問題は、車そのもの出来ではない部分に潜んでいるといえそうだ。
【表&画像】マツダ6(アテンザ)セダン&ワゴンの画像と販売台数を見る
文:松田秀士
写真:編集部、MAZDA
マツダ6は本当に「よく出来た車」なのか?
筆者は普段から広報車両を借りて日ごろの足とし、マイナーチェンジなどがあれば、可能な限り早く試乗することにしている。
その意味で2018年のマイチェン以降のアテンザ(=当時)には注目して試乗した。私はアテンザを、サイズ感、室内スペース感、デザイン感など筆者目線で日本のセダンとして、押さえるべきところをしっかり押さえているモデルと評価してきた。
ただ唯一、高級セダンとしては乗り心地や室内の静粛性に改良の余地が残されていると感じていたのだ。
当時、これはマツダ車全般に言えたことで、ハンドリングや走りはかなりのレベルにあるのに対して、室内静粛性、特にロードノイズの低減がテーマだと開発陣には苦言を呈していた。
そして、2018年のマイナーチェンジモデル。まずは試乗会でトータル2時間ほど試乗し、合格点以上の乗り味と静粛性を確認し、しばらくたってから10日間ほど通して試乗。
普段使いでの試乗では改めて静粛性の進化を確認し、このために行ったと思われるフロア剛性のアップ、サスペンション支軸周りのしっかり感がハンドリングをさらに確かなものにしていることもわかった。
さらに、GVCプラスによるスムーズなコーナリングの進化など、長距離を走らないとわからないことも実感。マイチェンとは思えないほどの走りの改良だったことが記憶に新しい。
また、インテリアではシートが最新のものに変更され、腰痛持ちの筆者にもかなり優しいことも判明。老眼に優しいヘッドアップディスプレイをフロントガラス投影式に変更したことも、ドライブの疲れ低減と安全性を向上させている。
長所と訴求ポイントが合ってない!? マツダ6が抱えるジレンマ
これだけの進化が施されているのになぜ売れないのか?
ワゴンはモデル末期のアウトバックにも販売台数で及ばない。もちろん、このクラスでは販売網でかなわず、おまけに日本人が好むハイブリッド専用車となったカムリに、一番のターゲットユーザーを奪われているのは理解できる。
にしてもだ。ハッキリ言って、輸入車も含めてここ最近筆者が中長期試乗したセダン&ワゴンモデルのなかでもマツダ6はかなりの実力を持っている。
そこでマツダ6の魅力を他車と比較しながら見ていきたい。
もちろん、比較他車にも優っているところもある。ただ、良いものを持ちながらも、あまりにデザインや質感の訴求に広告などを費やし、車そのものの実力についてのアピールが行き届いていないのではないか? と筆者は考えるのだ。
まずカムリと比較しよう。
カムリは直進安定性が良く、なんといってもハイブリッドだ。2.5Lエンジンをもつハイブリッドは加速面でもプリウスに代表されるハイブリッドイメージを覆すもの。走りも明らかに良い。
しかし、マツダ6には2.5Lターボエンジンがある。このパワーフィールは久々の暴れん坊将軍だ。ここ最近、これほど気持ちが良く、ときに手に負えないのでは? というエンジンに出くわしたことがないほど。
燃費ではカムリに負けるが、軽量ゆえの軽快感と加速力では優る。もし燃費が気になるのであれば2.2Lクリーンディーゼルがある。
筆者の経験では都内を含め平均して17km/L前後の燃費を計測。カムリも同程度だったと記憶しているが、ディーゼルは軽油ゆえにお財布に優しい。
電動に頼らない内燃機関の贅沢な加速フィール。ディーゼルだろうがガソリンだろうが、そこには味覚があるし飽きない。
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