【消費増税目前なのに沈静…】駆け込み需要が「ない」事情と思惑

 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がまとめた2019年8月の新車販売台数は、前年同月比6.7%増の38万8600台と2ヵ月連続で前年実績を上回った。しかし、2019年、前年同月比で2ケタ増えた月はなく、上半期(1~6月)では0.8%増 だった。

 登録車は4.0%増の24万2718台(2カ月連続のプラス)、軽自動車は11.5%増の14万5882台(3ヵ月ぶりのプラス)となった。

 2019年8月の登録車のブランド別新車販売台数ではトヨタが前年同月比4.1%増(10万9273台)、ホンダが同14.5%増(2万6777台)、レクサスが同52.1%増(4593台)とプラスを達成。

 一方、日産は同16.3%減(2万5116台)、マツダが同3.9%減(1万1399台)、スバルが同3.8%減(8170台)、スズキが同5.7%減(8121台)、三菱が同7.1%減(3046台)、ダイハツが同21.3%減(2111台)とマイナスに落ち込んだ。

 軽自動車の2019年8月のブランド別新車販売台数は新型タントを発売したダイハツが前年同月比16.5%増(4万7680台)、スズキは生産体制の見直しもあって同7.1%減(3万8244台)と低迷。

 N-WGNを発売したホンダは同25.9%増(3万598台)、日産は同30.0%増(1万6637台)、三菱は同31.1%増(4719台)とプラスを達成した。

 しかし、2014年4月1日に5%から8%へ増税する前、2013年9月から2014年3月まで7カ月連続で前年同月と比べ10%超も伸びて、大きな駆け込み需要が発生した前回と比べるとなんとも寂しいかぎりだ。

 そこで、2019年9月に入っても駆け込み需要はあったのか? 消費増税が行われる2週間前の2019年9月中旬、流通ジャーナリストの遠藤徹氏が各メーカーの新車販売ディーラーを回って、その状況を徹底取材した。

文/遠藤徹
写真/ベストカーWEB編集部

(画像ギャラリー)2019年10月前後に登場するマイナーチェンジ車、フルモデルチェンジ車


消費税が5%から8%に上がった時には駆け込み需要が発生したが……

各ディーラーには決算セールののぼりが上げられていたが……

 2019年10月1日から消費税が2%引き上げられ10%となる。前回の2014年4月、5%から8%に変わった時には大きな駆け込み需要が発生、その反動で実施後は買い控えとなった。

 ところがである。今回の新車販売はどうやら以前と大きく異なっている。若干の駆け込み需要が発生していたのは2019年7月あたりまでで、2019年8~9月は鎮静化している状況にある。

 なぜ駆け込み需要が起きていないのか? 以下の理由が考えられる。

 まず1つは、消費税の上げ幅が2%と小さく、代わりに自動車取得税の廃止、環境性能割の導入などで燃費のよいハイブリッド、電気自動車、クリーンディーゼル、一部ガソリン車など実質1%程度の値上げにとどまっている車種が多いことが挙げられる。

 またトヨタ、ホンダ、マツダ、ダイハツなどの各社は2019年6~10月に多くの車種をフルモデルチェンジ、マイナーチェンジ、一部改良などを実施し、従来モデルの在庫一掃セールも絡んだりしているため、これらは大幅値引きを行い、消費税引き上げによる価格変動は関係ない状況にもなっている。

 車種による格差も見受けられる。車両本体価格が250万円以下のコンパクトカー、軽自動車は消費税引き上げによる値上げ幅が比較的小さいので、値引きで相殺できる状況にある。

 これに対して250万円以上の小型車、上級モデル、ラグジュアリークラスは影響が大きく、駆け込み需要の対象になったりしている。

 2019年10月以降に購入した新車(軽自動車を除く)から、毎年かかる自動車税は排気量に関わらず年額1000円から4500円の範囲で引き下げられるのだ。

 軽自動車により近い、もともと金額が少ない排気量が小さなクルマほど、引き下げ額が大きくなる。1000~1500ccあたりのクルマは実質で10%以上の軽減となる。

 例えば1000cc以下のクルマの場合、消費増税前が2万9500円、増税後は2万5000円だから4500円、15%の軽減になる。2501~3000ccは、5万1000円が5万円に改訂されるが1000円、2%しか減らない。

1000㏄~1500㏄のクルマは実質自動車税が10%以上軽減される

 また消費税が導入されたら自動車取得税を廃止する約束になっていたが、廃止する代わりに環境性能割という自動車取得税に似た新しい税金が導入される。

 この環境性能割について、消費税が導入される2019年10月1日から1年後の2020年9月30日まで税額を安く抑える。

 例えば小型車、普通車の場合、2020年度燃費基準達成車の環境性能割税率は、本来は取得価額の2%だ。これを消費増税後の1年間は1%に抑えることになっている。

駆け込み需要を抑えるよう国からの自粛要請

 また、今回、駆け込み需要が比較的軽微と思われたもうひとつの要因のひとつに挙げられるのが、メーカーの販売店に対する自粛要請があったのも効いている事情もある。

「メーカーは国からの行政指導で市場の混乱を避けるため駆け込み需要を煽るような販売活動を避けるようにしてほしいと要請され、それが販売店に伝えられています」(首都圏ホンダカーズ店)との声もある。

 これについては実際傘下の販売店に伝えているメーカーとそうでもないところにわかれているようだ。トヨタとホンダは行政指導の要請を受けて対応、日産以下他社は正確に伝えていないようだが、これについてはあまり明確になっていない。

9月はメーカーの中間決算セール

 2019年9月は駆け込み需要の最終月といえるが、メーカーの中間決算セールとも重なっているので、どちらの影響が強いのかはっきりしない状況にある。

 2019年9月はほとんどのディーラーが1台でも多く売ろうと大型キャンペーン企画を実施している。具体的には車両本体価格の大幅値引き、オプションサービス、ナビの割引、キャッシュバック、下取り車の高価格買取りや最低保証などである。

 例年だとこれらの資金はメーカーが拠出するわけだが、今回はゼロか金額を減らしている。これも駆け込み需要の煽りを和らげる一因になっているのかもしれない。

メーカー別で見る駆け込み需要発生状況

各メーカーの新車販売現場では駆け込み需要はあったのだろうか?

 それでは、各メーカーの駆け込み需要に対する取り組みを見ていこう。

■トヨタ販売店の証言
「量販車についてはオーダーが入ってから生産し、納車するので成約後2、3カ月かかります。

 2019年7~8月時点で消費税は10%になるのをユーザーに伝えていますので、駆け込み需要は基本的にあまり存在しないと思います。

 2019年4月に新型RAV4、2019年9月にカローラのフルモデルチェンジ、2019年10月にC-HRのマイナーチェンジなどで納期が先送りになっていますので、こちらのクルマも駆け込みの対象になっていません」(東京地区のトヨタモビリティ東京店)と、消費税引き上げにはあまり影響を受けていない様子。

 また納期が長引き、消費税が10%になれば、その旨をユーザーに伝えて値上がり分での契約書を作成するようにしている、という。

■日産販売店の証言
 主要モデルの新型車は軽自動車のデイズだけで登録車は2019年8月にマイナーチェンジしたセレナ以外はモデルが古い車種ばかりだから、駆け込み需要を活用するしか手がない状況にある。

「2019年9月は中間決算セールなので10万円のキャッシュバックや買い得車設定で盛り上げを図っています」(首都圏日産ディーラー)とコメント。

■ホンダ販売店の証言
「2019年7月にN-WGNをフルモデルチェンジし、2019年10月にはフィットのフルモデルチェンジやN-BOX、フリードのマイナーチェンジ、2019年11月にはオデッセイのマイナーチェンジなどがあります。これに従来モデルの在庫一掃セールと重なっている状況ですが、これといった駆け込み需要はないですね」(首都圏ホンダカーズ店)。

■マツダ販売店の証言
 2019年5月にマツダ3、2019年7月にマツダ2を発売し、2019年9月20日にマツダCX-30を発売。新型車が多いうえに販売店のマージン幅縮小で値引き余力がなくなっているので、駆け込み需要といっても、買い得モデルの設定などについては対応ができない状況にある。

「もともと大幅値引きには対応していません。逆にクリーンディーゼル車は、環境性能割の対象になって売り込みには優位になりますので駆け込み需要は無関係ですね」(首都圏マツダ店)とあまり駆け込み需要には無関係とのスタンスだ。

■スバル販売店の証言
「2019年10月に発売するマイナーチェンジ版のインプレッサの受注を2019年8月27日から開始していますがおかげさまで好調です。でも駆け込み需要という大きな動きはありません」(首都圏スバルディーラー)。

■三菱販売店の証言
「消費税10%増税前に登録できるように、令和初の決算セールを開催してきましたが、以前のようにどっとお客様が焦ってお見えになることはなかったですね。デリカD:5やエクリプスクロスやekシリーズなど新しい車種が増えましたので売りやすいです」(首都圏三菱ディーラー)。

■スズキ販売店の証言
「今年は新型車が少なく増販攻勢をかけにくい状況ですが、軽自動車とコンパクトカーが中心のため、消費税引き上げの影響はあまり受けていません。2019年9月の中間決算セールは普通に進めています。駆け込み需要はあまり意識していないですね」(首都圏スズキ店、アリーナ店)。

■ダイハツ販売店の証言
「新型タントは好調な販売なので消費税が10%になっても売れると思います。他のモデルも軽自動車、コンパクトカーが中心なので消費税10%の影響は少ないと思っています」(首都圏ダイハツディーラー)。

2019年10月以降は反動減?

 つまり、消費増税によって自動車の本体価格は実質負担が増えるわけだが、ほかの税金を調整して増税前後でそこまで大幅な変動が起きないよう、緩和措置が取られているので、消費税が10%になる10月1日以降、大きな反動減はあまりないと思われる。

 むしろ2019年12月や2020年3月に行われる決算セール時の方が、大がかりなキャンペーンが行われ、値引額が拡大するかもしれない。

(画像ギャラリー)2019年10月前後に登場するマイナーチェンジ車、フルモデルチェンジ車

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