現在人気のある乗用車カテゴリーにSUVがある。しかし、世の中には「なんちゃってSUV」と呼ばれるクルマも存在している。では、なんちゃってSUVとはなんなのか? そしてその利点はどこにある?
文/長谷川 敦、写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、FavCars.com
【画像ギャラリー】マルチプレイヤーのなんちゃってSUVをもっと見る(13枚)画像ギャラリー■まずはSUVの定義を考えよう
SUVとは「Sport Utility Vehicle」の略語で、日本語にすると「スポーツ用多目的自動車」ということになる。
しかしこの日本語訳ではもうひとつカテゴリーの実態をつかみにくく、どのようなジャンルのクルマかわからない。
実は、SUVにそこまで明確な定義があるわけでもなく、悪路走行を可能にするため最低地上高が高く、タフな車体と足回りを備えたクルマがSUVと呼ばれることが多い。
ちなみに以前の日本では、SUVよりもRV(Recreational Vehicle、つまりレジャー向けの乗用車)と呼ばれるケースのほうが多かったが、RVがカバーする範囲はSUVだけでなくステーションワゴンや本格的クロスカントリーモデル、キャンピングカーなども含んでいたため、より細分化するためにSUVが用いられるようになった。
なお、クロスカントリーカーも広義ではSUVに含まれる。
本来は未舗装路の走行も想定した設計のSUVだが、車高の高さやしっかりとしたボディ&サスペンション、耐久性の高いエンジンなどの美点に着目され、日常使いのクルマとして使われるケースもあった。
とはいえ本格的なSUVは、街乗り用にはややオーバースペックな部分もあった。
そこで注目が集まっているのが、今回の主役、なんちゃってSUVなのだ。
■“なんちゃってSUV”にも定義はあるのか?
ではここから今回の本題である「なんちゃってSUV」について考えていきたい。
もちろん正式なクルマ用語としてなんちゃってSUVがあるわけではなく、一見SUVに思えるけど、実はそうでないクルマがなんちゃってSUVにカテゴライズされる。
つまり、SUV的な特徴を持つが、実際には一般的な乗用車に近いクルマが世間ではなんちゃってSUVと呼ばれている。
なんちゃってSUVでは、通常のロードカーのボディ形状をSUV風にデザインし、それいでいて最低地上高はロードカーレベルに抑えられている。
そもそも悪路を走行することがないのであれば、最低地上高を高くする必要はなく、サスペンションのチューニングもそこまで硬くしなくてもいい。
むしろ、頑丈で重いボディと硬めのサスペンションは一般道での乗り心地を低下させる可能性もある。
とはいえ高めの視界による運転のしやすさと、広い室内空間&荷物スペースというSUVの特徴は一般道でも便利なことが多く、こうしたSUVの利点と、乗用車の扱いやすさを“いいトコどり”したのがなんちゃってSUVだといえる。
なんちゃってSUVと本格SUVの間に明確な線引きはないが、大まかに考えて、最低地上高が170~180mm以下のクルマが「なんちゃってSUV」、それ以上の悪路に適応した地上高を持つクルマが「本格SUV」と区別できる。
最低地上高だけでなく、ボディ剛性の高さや足回りの構成もなんちゃってSUVと本格SUVを区別する指標になるが、これは外見からではわかりにくい。
近年人気を高めているクルマのカテゴリーにクロスオーバーSUVがあるが、このクロスオーバーSUVも広い意味ではなんちゃってSUVといえなくもない。
近い将来には、クロスオーバーSUVがさらに勢力を拡大して、なんちゃってSUVという呼び方そのものが使われなくなる可能性もある。
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