■エンジンだけじゃない!! 実は最強のコーナリングマシン
シャシーチューンも究極のコーナリングマシンと言っていいほどハイレベルな仕上がりだ。その内容はやはリインテR同様、細部までバッチリ手が入ったもの。
もちろん、ボディの剛性アップはぬかりないし、15mmの車高ダウンで安定感を増している。また、フロントブレーキは15インチヘグレードアップ。
そして、ここまで気を配ったかとおおいに感心したのは、ヒール&トゥがよりやりやすいように、ブレーキペダルの配置さえも変えたことだ。乗り心地は確かに硬い。低速ではハンドルも重い。音もうるさい。長距離走行はイヤになるかもしれない。
しかし、一度ワインディングへ踏み込めば、そんなことは忘れてしまう。頭抜けたコーナリング性能とトレース能力、素晴しい高速安定性。
そしてズシッとした重さで路面のインフォメーションをダイレクトに伝えてくれるステアリングフィール。ブレーキもダイレク卜感に富み、制動パフォーマンスも強力だ。
とにかく、シビツク・タイプRの走りは並のストリートチューンのレベルではない。公道走行を可能としたレーシングシビックといった感じだ。さらに魅力的なのは価格がきわめて安いこと。
本格的チューニングがこれだけ満載されていれば300万円以上でもけっして高くないと思う。ヨーロッパ車だったら、400万円でもできないかもしれない。
それがフル装備(とはいっても電動ドアミラー、マニュアルエアコン、パワーウインドウは17.7万円のセットオプション)で199.8万円で手に入るのだ。
のちに発売された、パルサーVZ-Rの200馬カN1仕様の252.3万円と比べるとその安さがより実感できるのだった。
さて、そのパルサーVZ-Rとの走りの違いだが、ひとことで言ってシビック・タイプRのほうがより刺激的な味わいを持っている。エンジンのパワーの盛り上がり方もそうだし、ハードに固められたサスペンションもそう。
さらには内外装のスペシャルな雰囲気も圧倒的にシビックRのほうが上だ。もちろん、パルサーも実力的には200馬力のスペックにふさわしいモノを持っているのだが、スポーツ度の演出という点でやや不足を感じさせる。
洗練されすぎていると言えるのかもしれない。両車の個性を端的に表現すれば、剛のシビック・タイプR、柔のパルサーVZ-Rということになる。
また、兄貴分のインテRとの比較となると、刺激性ではさらにインテRが上をいく。排気量が大きいだけによりパワフルで、トップエンドの伸びもシビックRと変らない。
加えてインテRの3ドアの車重はシビックRに対してたったのプラス10kg。動力性能はインテRとなる。ただし、シャシー性能はシビックRが優れている。
特に中・高速のスタビリティで優位性が目立つ。ハンドリングの良さでもシビックRだ。インテRはシビックRよりジャジャ馬なのだ。
■決着をつけよう。勝負の行方は谷田部で!!
対決の舞台はおなじみの谷田部。ここなら思う存分に限界まで攻め込むことができる。テスト当日はあいにくの雨。ウエット路面がバトルに水を差すのでは!?とも思ったが、それは杞憂だった。
まずは動力性能チェックだ。タイムアタックに自然と熱が入るのが自分でもよくわかる。ウエット路面のグリップを確認しつつ、ベストのスタートポイントを慎重に探り出す。
両車数回のアタックでそれぞれのベストタイムをマークした。ここで勝ったのはパルサーVZ-Rと、いってもその差はほんのわずかのもの。
今回はより細かいデータを計測するために、車載式の計測装置(小野ビット)を使用したのだが、こいつが弾き出したゼロヨンタイムはパルサーVZ-Rが15秒15、そしてシビックタイプRが15秒25。
わずか10分の1秒の差でしかない。今回のテスト路面はウエット。タイヤは両車ともにブリヂストンの195/55R16サイズを装着する。
しかしシビックRの方がよリドライ、ウエットともに高性能なハイグリップタイプなのだ(RE010)。これに対してパルサーはコントロール性を重視したタイプのタイヤとなる。
条件的にはパルサーの方が不利ということだ。その差はスタートダッシュでハッキリとあらわれた。パルサーはシビック以上に激しいホイールスピンに悩まされたのだ。
当然ダッシュの勢いもシビックに劣ることになる。ここでパルサーがシビックと同じタイヤを装着していたら、さらにコンマ2〜3秒はタイムアップしていたのは間違いない。
タイヤの影響というのは予想以上に大きいのだ。ドライ路面での勝負を予想すると、パルサーは14秒5〜6、シビックは14秒7~8といったところだろう。
やはりパルサー優勢は変わらないものの、いずれもとてつもない速さだということは間違いない。
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