近年発売される新型車のほとんどに、クルーズコントロール機能が搭載されている、もしくはオプション選択が可能となっていますが、クルコンがいくら普及しても、完全自動運転とならない限り、アクセル操作は、運転するうえで最重要となる操作のひとつです。
そんなアクセルペダルには、「吊り下げ式」と「オルガン式」のふたつの機構方式があり、日本では「吊り下げ方式」が広く採用されていますが、国産の一部高級車や、BMWやメルセデスベンツといった欧州車では「オルガン式」が主流です。
高級車がこぞって採用するには、訳があるはず。「オルガン式」アクセルペダルには、どんなメリットがあるのでしょうか。元日産開発エンジニアの筆者が解説していきます。
文/ 吉川賢一
写真/編集部
■吊り下げ式とオルガン式の違い
ふたつのペダル方式の、大まかな特徴は次のとおりです。
◆吊り下げ式ペダル
ステアリングホイールのシャフトの下あたりを支点として、リンク棒に装着されたペダルを、足裏の上半部で操作します。ペダルを上から吊り下げているように見える方式です。
◆オルガン式ペダル
ペダルをフロアに取り付けた、オルガンのペダルの様に見える方式です。ペダルの下端を支点としてフロアに蝶番で固定されており、足裏全体で操作します。
■オルガン式のメリットとは?
1)アクセル操作がしやすい
吊り下げ式であってもオルガン式であっても、アクセル操作は、踵を床につけ、踵を支点にして操作する、という基本は同じなのですが、空中の吊り下げペダルを操作するのと、床から生えているペダルを操作するのでは、操作に違いがあります。
吊り下げ式ペダルの場合、図のようにペダルを押した時のペダルの軌跡と足裏の軌跡が異なります。そのため、支点がずれやすく、ペダルを踏み込むたびに、踵が前にずれていく、といった傾向があります。
対して、オルガン式の場合は、ペダルの軌跡と、足裏の軌跡が同じになるため、支点がずれることなく操作することができ、アクセルの踏み加減を調節しやすいです。
ショーファードリブンカーとして使われることのある高級車で、オルガン式アクセルペダルが採用される理由のひとつでしょう。
2)右足が疲れにくい
アクセル操作で支点がずれにくいため、無駄な動きをしなくて済み、右足が疲れにくいです。
3)燃費にもいい
微細なアクセルコントロールがしやすいので、一定速を維持する低燃費走行もしやすいです。
■オルガン式ペダルのデメリットは?
ひと昔前は、アクセルペダルとエンジンのスロットルは、ワイヤーで繋がれており、一般的なフロント搭載エンジンの場合だと、オルガン式ペダルは、吊り下げ式に比べてペダルが動作する機構やワイヤーの取り回しが複雑になってしまうため、コストが高くなる、といったデメリットがありました。
しかし最近は、アクセルの踏み込み量をセンサーで検出して、電気的にスロットルを駆動させるスロットルバイワイヤー方式が採用されている場合がほとんどであるため、このデメリットは小さくなりつつあります。
また、吊り下げ式ペダルでは、踵を支点にして、ブレーキペダルとアクセルペダルを行き来する操作が容易にできますが、オルガン式ペダルの場合、ブレーキ操作のあと、足を置きかえないとアクセルペダルが踏みにくい、という面もあります。
筆者は現在、オルガン式ペダルのクルマに乗っていますが、やはり置きかえる操作は必要です。とはいえ、これは慣れるまでの問題ですので、デメリットとは言い切れないでしょう。
ということで、総合してメリットが多いのはオルガン式ペダルと言えます。
コメント
コメントの使い方