究極のデートカー!? ホンダ S-MXがやりすぎてしまった「実用性」の追求 【偉大な生産終了車】

■短命に終わった3つの理由とは

 ホンダS-MXが1代限りで生産終了となってしまった理由は、基本的には3つあるはずです。ひとつは、後から登場したトヨタbBに市場をさらわれたということ。

 S-MXから約4年遅れて登場したトヨタbBは、ヴィッツがベースですので車格としてはS-MXより下なのですが、「S-MXと似たようなコンセプトである」ということと、「それでいてS-MXより安い」ということで、S-MXの潜在顧客層を根こそぎ持っていきました。

トヨタから登場した「bB」。こちらは2016年まで生産され、現在はタンクがその後継として存在する

 もうひとつの理由は、申し訳ないですが「車としての出来がイマイチだった」ということに尽きるでしょう。

 もちろん、前章で詳述したシートアレンジなどに代表される「使い勝手」に関しては、S-MXは優秀な車でした。4mを切る短い全長でありながら車内は広々と使えましたし。

 ただし「走り」はお世辞にもホメられるものではありませんでした。まあ悪くはないのですが、だからといって良いわけでもない……みたいな感じです。

 とりわけ「ローダウン仕様」の乗り心地はちょっと酷なモノがありました。

 そして第3の理由は「恋愛仕様」のイメージが強すぎた……ということになると思います。

 そういったドキッとする感じのマーケティングは、最初のうちはウケるものですが、飽きられるのも早かったりします。

 また「ティッシュボックスうんぬん」みたいな話が出回りすぎると、普通に車中泊とかに使いたい人は買いづらくなってしまいます。そんなつもりはいっさい(ほとんど?)ないのに誤解されてしまうのは、心ある大人であれば避けたい事態でしょう。

 以上の理由により、最初はスマッシュヒットとなったもののいつしか飽きられ、そして消えていったホンダS-MX。

 しかしS-MXの「恋愛うんぬん」といった部分を除いた「純粋な車としてのコンセプト」は、決して悪くなかったように思えます。

ホンダの得意とする空間の有効活用が存分に発揮された1台とも言える

 余裕あるベース車をコンパクトに切り詰めて取り回し性能を向上させ、それでいて車内は十分広々と使えるように工夫をこらす。

 さらには、動力性能うんぬんではなく「実用車としての使い勝手」にひたすらこだわる。……賛否両論はあるでしょうが「カップルに便利な車を作る」という実用性(?)の追求も、決して悪い話ではなかったと筆者は考えます。

 それはさておき、S-MXの直接の後継モデルは生まれなかったものの、その「コンパクトでシュッとしたカタチのなかに抜群の実用性を織り込む」という考え方は、現在のホンダ フリード+に受け継がれている気もしないではありません。

■ホンダ S-MX 主要諸元
・全長×全幅×全高:3950mm×1695mm×1750mm
・ホイールベース:2500mm
・車重:1330kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1972cc
・最高出力:130ps/5500rpm
・最大トルク:18.7kgm/4200rpm
・燃費:11.2km/L(10・15モード)
・価格:164万8000円(1996年式S-MX)

●【画像ギャラリー】 ホンダ S-MXのエクステリア&インテリアをギャラリーでチェック!!

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