【便利すぎるゆえの盲点!?】今や定番! 両側スライドドアの意外な欠点とは

【便利すぎるゆえの盲点!?】今や定番! 両側スライドドアの意外な欠点とは

 日本一売れているホンダ N-BOXや日産 セレナなど、今や人気ミニバンのほとんどが採用している定番の装備が「スライドドア」。

 今では、冒頭にあげた2つの人気モデルを筆頭に、運転席側と助手席側の両側にスライドドアを設けた車がほとんどだが、当初はセレナやトヨタのノア、ホンダのステップワゴンも、片側のみスライドドアを採用していた。

 圧倒的多数となった両側スライドドアには、どのような長所と短所があるのか? 実は、便利ゆえに見落としがちな注意点もある。

文:渡辺陽一郎
写真:HONDA、編集部、TOYOTA、NISSAN

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かつては「片側」も多かった! スライドドアの多様なタイプ

助手席側にピラーレス構造を採用し、大開口を実現したN-VAN。運転席側は通常の柱がある構造で左右非対称の両側スライドドア車となる

 車のボディは、普通は左右対称だが、非対称になっている場合もある。馴染みのある車種ではダイハツ タントやホンダ N-VANだ。

 左側はピラー(柱)をスライドドアに埋め込み、前後のドアを開くとワイドな開口幅を得られるようにした。右側はボディ剛性を確保するために、一般的なピラーを備えた形状だから、左右が非対称になっている。

 また、トヨタのハイエースや日産 NV350キャラバンのようなワンボックスの商用車には、左側だけにスライドドアを装着する4ドアもある。

 4ドアの右側には、運転席のドアが付くだけで、中央から後方はノッペリとしたパネル面が広がる。ハイエースのスーパーロングボディは、右側にスライドドアを装着しない4ドアしか選べない(NV350キャラバンのスーパーロングには5ドアもある)。

 過去を振り返ると、ハイエースの初代モデルが1967年に発売された時点では、バンを含めてスライドドアは装着されていなかった。

 この後、1968年には後席のドアをスライド式に変更した4ドアが加わり、1972年には、両側にスライドドアを備える今日と同様の5ドアも設定された。

 1977年登場した2代目ハイエースの場合、標準バンとロングバンに、4ドアと5ドアの2種類を設定。スーパーロングバンは4ドアのみだから、今日と同様の組み合わせになった。

ハイエースには今も存続! 片側ドアの両側に対するメリットは?

現行型ハイエース。写真のように運転席側にはドアを設けない、4ドアの片側スライドドア仕様もある

 それにしても4ドアは右側から乗り降りできず、5ドアに比べて不便を感じると思われるが、なぜ設定されているのだろう。

 4ドアは右側にスライドドアを装着しないから、5ドアに比べてボディ剛性を確保しやすいのは確かだ。ハイエースのスーパーロングバンが現行型でも4ドアのみになるのはそのためだ。

 それでも標準的なロングバンには4ドアと5ドアが設定され、よほど負荷の大きな使い方をしない限り、両側スライドドアの5ドアに不都合が生じる心配はない。最大積載量もドアの枚数による違いはない。

 ロングバン「DX」の2Lガソリンエンジン車同士で、4/5ドアの車両重量を比べると、ドアの数が少ない4ドアは30kg軽い。価格も同様に4ドアが2万7500円安い。JC08モード燃費は5ドアが11km/L、4ドアは11.4km/Lだから、若干軽い4ドアが優れる。

 果たしてこの違いだけで、4ドアを残しているのだろうか。ハイエースを扱うトヨペット店に、4ドアを購入するユーザーの動機について尋ねた。

「4ドアを購入されるお客様には、以前から4ドアのハイエースを乗り続けてきた方が多いです。右側のスライドドアは不要だから、価格の少し安い4ドアで充分というわけです」

「また、車内の右側に棚を装着して仕事の道具などを整理するお客様は、4ドアにこだわります。荷室の右側にスライドドアが装着されると、棚を付けられないからです」

「このほか床面の形状で、4ドアを選ぶお客様もおられます。右側にもスライドドアが装着されていると、床の右端が乗降ステップのために掘り込まれて床面積を狭めます。その点で4ドアの床面は、右側まで平らになってデコボコもなく、運ぶ荷物の内容次第では使いやすいです」

と説明してくれた。

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