デザインを変えないモテルチェンジは大賛成だが! N-ONEに必要なのは「安さ」と「楽しさ」じゃないのか?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

デザインを変えないモテルチェンジは大賛成だが! N-ONEに必要なのは「安さ」と「楽しさ」じゃないのか?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

 ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はホンダ N-ONE(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2021年4月26日号に掲載した記事の再録版となります)

撮影:西尾タクト

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■デザインを変えないフルモデルチェンジに大賛成!

ホンダ N-ONE RS(CVT・199万8000円)…外板パネルが先代と同じままフルモデルチェンジした2代目N-ONE。外観の変更点は樹脂部分のみだが、新世代プラットフォームを採用するなど中身は大きく進化している
ホンダ N-ONE RS(CVT・199万8000円)…外板パネルが先代と同じままフルモデルチェンジした2代目N-ONE。外観の変更点は樹脂部分のみだが、新世代プラットフォームを採用するなど中身は大きく進化している

 我々世代にとってホンダN360は特別なクルマだった。

 1967年、私が高校生の時にデビューし、最初に憧れたクルマ。当時は16歳で取れる軽自動車免許があって、シャコタンにしたN360やスバル360が文化祭で飾られたりしていたものだった。

 高校生がクルマを持つなんて夢のような話で、私はその様子を羨望の眼差しで見ていたものだ。

 また、N360はスバル360やマツダキャロルなどのライバル車と比べても少し安く、若者だけでなく一般家庭でも人気があったし、前輪駆動という独創性もあってホンダらしさにあふれたクルマだったのだ。

 N-ONEはN360を現代に復刻させたクルマで、先代モデルから大いなる興味を持って見ていた。N-BOXよりも趣味性が高いし、何より憧れのN360を現代に蘇らせるというコンセプトが最高だった。

 そして、今回試乗する2代目N-ONEである。

 なんとスタイルは初代と同じ。デザインを変えないフルモデルチェンジなんて過去にあっただろうか。それでいて、中身は全面的に新しくしているというのだから驚きだ。

 私としては、その決断に大賛成。クルマ好きの間では、よく「現代の技術で蘇らせたい昔の名車」という話が出てくるが、N-ONEはそれを現実のものにしているのだ。

 モデルチェンジの時期が来たからといって、デザインを変える必要はないだろう。いいモノは残せばいい。その英断に拍手を送りたい。

ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1545mm、ホイールベース2520mm。外観を変えない珍しいフルモデルチェンジを敢行。いいモノは変える必要ないのだから、私は賛成だ!
ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1545mm、ホイールベース2520mm。外観を変えない珍しいフルモデルチェンジを敢行。いいモノは変える必要ないのだから、私は賛成だ!

 ただ、デザインを変えないなら「車両価格を値下げする」という選択肢もあったように思う。

 専門的なことはわからないが、新しい金型を用意する必要がないならコストも抑えられるはず。それなのにホンダの軽自動車群のなかでも高価な部類になっているのはなぜなのか?

 もうひとつ言いたいことがある。

 新型N-ONEはオリジナル、プレミアム、RSという3つのグレード構成としているが、高級仕様のプレミアムやスポーツ仕様のRSはズレているような気がする。

 付加価値を求めるなら、そちらではなく「楽しさ」だろう。この件については、あとでじっくりと説明する。

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■N-ONEはホンダeを目指すべきだった

 今回試乗したのはRSのCVTだった。

 RSにはターボエンジンしかなく、パワーは充分だし、走り屋グルマのような音も出ていて、まさにオトコのクルマという仕上がりになっていた。

RSだけにスポーティな走りを満喫できる。今回はCVTだったが、6MTがあるのも嬉しい
RSだけにスポーティな走りを満喫できる。今回はCVTだったが、6MTがあるのも嬉しい

 それでいて街中をのんびり走っていると静かで、乗り心地も悪くない。

 ホンダの軽自動車はさすがの出来で、N-ONEでも室内の広さは充分だし、座面を畳んで後席を広い荷物置き場にすることもできる。このあたりの使い勝手はN-BOX、N-WGNと同じで、実用性能の高さを実感できる。

 つまり、かつてのN360ファンにとっては完璧なクルマなのだが、N360を知らない世代に訴えかけるものがあるのかというと、そこは疑問である。

 時を超えて魅力を感じさせる外観のデザインはいいとしよう。

 気になるのは室内で、ホンダeのような新提案がまったくないのが残念なのだ。メーター周りもインパネ全体も旧態依然。運転席にいてもN-BOXとN-WGNとの違いは着座位置の高さ以外に感じることができない。

特徴のないインテリアは残念な部分。新しい提案が欲しかった!
特徴のないインテリアは残念な部分。新しい提案が欲しかった!

 先ほどの話に戻そう。今のユーザーがこのクルマに高級感やスポーツ性を求めるのだろうか?

 昔のN360はスポーティな走りをウリにしていて、それが当時の若者を熱狂させたわけだが、そのままのコンセプトが令和の時代に通用するのか。それよりもN-BOXやN-WGNにはない「楽しさ」や「新しさ」を追求するべきではないのか。ずっとそんなことを考えていたのである。

 それを求める人がいるなら、N-ONEにプレミアムもRSもあっていい。でも、私なら豪華なシートやスポーティな足回りにプラス料金を支払うより、キャンバストップや個性的な内外装におカネを使いたい。ホンダeでできたことが、なぜN-ONEでできないのか?

 もうひとつ、冒頭で「スタイルを変えないならもっと安くしてほしい」と書いたが、新型車が価格を下げて出てきたら相当なインパクトがあったはずだ。

 最低限の装備を揃え、内外装をシンプルにした破格値のベーシックグレードがあってもよかった。

 今からでも遅くはない。「安いN-ONE」と「楽しいN-ONE」で現代の若者たちを振り向かせてほしい。

 それが高校時代、N360に憧れていた私の願いである。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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