■2024年に変わったトヨタの電動化戦略
2023年のトヨタの「テクニカルワークショップ」では、2026年のBEV販売台数150万台の目線が示されました。豊田章男社長(当時)が2021年末に掲げた2030年350万台の実現に向けた戦略です。
2026年まではbZ4Xをベースに置くBEV専用プラットフォーム「e-TNGA」と、クラウンをベースに置く「GA-K」プラットフォームを改良したマルチパスウェイプラットフォームを中心に進められます。
2026年からは新設したBEVファクトリーが開発する次世代のBEV専用プラットフォームを導入し、レクサスLF-ZCを皮切りに多数のBEVを展開して、2030年350万台の実現に向かうという図式です。
この基本的なフレームワークが変わったわけではありません。変化点は2つあり、BEV専用プラットフォームよりもマルチパスウェイプラットフォームをより活用し、BEVだけではなくPHEVも増やすということです。これは需要の多様化に応えるためです。
ここで思い出してほしいことが、佐藤恒治社長が2023年4月の方針発表で示した200kmの電気航続距離を有するPHEV(トヨタは「プラクティカルなBEV」と呼ぶ)と、今年5月の「マルチパスウェイワークショップ」で発表された小型高効率エンジンです。
新エンジンは電動車と組み合わせる電気リッチ化を前提に開発した次世代のトヨタの内燃機関で、2027年頃からの欧米の次期排ガス規制に準拠します。
筆者は次世代のカローラクラスのGA-Cプラットフォームもマルチパスウェイ化され、小型高効率エンジンを搭載してPHEVの主力に育てるシナリオが濃厚だと考えています。
2030年頃には200kmの電気走行ができるPHEVが100万台規模に拡大し、トヨタの新しい武器へと成長するであろうと考えます。
BEVファクトリーはレクサスブランドを中心にBEVをけん引していきます。トヨタブランドはマルチパスウェイプラットフォームを中心にBEV、PHEVを推進するでしょう。
その結果、2030年には170万台のBEVファクトリーの専用プラットフォームが土台にあり、残る180万台はマルチパスウェイのBEV、そして100万台規模のPHEVが存在する未来図が見え始めているのです。
2026年のBEV目線引き下げは、PHEVの引き上げと同義に近く、この未来図に向けたファーストステップと考えます。
2024年5月の決算説明会において、佐藤社長はBEV販売目線には「PHEVを含めて検討を進める」との新見解を示しています。
BEV専用プラットフォームからマルチパスウェイプラットフォームを一段と重視する方向修正へのシグナルだと筆者は受け止めています。
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