2013年1月に発表されたシボレー7代目コルベット。その試乗の様子をプレイバック。GT-Rを追撃する強力ライバル現わる? (本稿は「ベストカー」2013年11月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:渡辺敏史
■9年ぶりのフルモデルチェンジで目指したもの
「コルベット」といえばアメリカンスポーツの代名詞。そして今年は誕生から60周年と、同じ名前で生き続けてきた世界最長寿のスポーツカーでもある。
……と言われても、多くの人が抱くのはアメリカンスポーツって何よそれという疑問だろう。
1960年代後半以降、世界のスポーツカーの技術的、性能的水準をリードしてきたのはヨーロッパだ。
コルベットはワールドカップとは一線を画したアメリカンリーグで、観客にとって最良のクルマであればいいという変貌を繰り返してきた感は否めない。
そんなコルベットが再び世界の檜舞台に戻ってきたのは1990年代の後半、第五世代から。
ル・マン24時間を獲ることを主眼においたレース活動が実を結んだのはご存じのとおりで、第六世代は世界のスポーツカーファンにその名を再認知させた。
それゆえ、9年振りのフルモデルチェンジとなる第七世代のコルベットにまず求められるのは、世界と対峙する速さの継承である。
そのためには完全刷新した今日的なアーキテクチャで武装するという選択肢もあっただろう。
が、開発陣が選んだのは伝統の継承。具体的にはフルフレームのシャシーに横置きしたリーフスプリングで支えるサスペンション、そしてエンジンはOHV・V8……と、それは半世紀以上続くコルベットの核たるメカニズムである。
字面だけを追えばその旧さに愕然とするが、コルベットがこれでスポーツカーの看板を張り続けてきたのも事実。
OHVでポルシェをやっつける、そのロマンにマニアは価値を見いだしてもいる。
もちろん、単に旧いわけではない。ハイドロフォームフレームはアルミに置き換えられ、6.2Lエンジンは直噴化にVVT搭載、果ては気筒休止技術までも採り入れている。
リアアクスルに置かれるミッションは7速のATとMTの2種類。460psのパワーに車重はストックで1400kg台と、その数字でもパフォーマンスは推し量れる。
ちなみに現地の雑誌がラグナセカで行った計測では、911カレラ4Sよりも1秒速く、F12ベルリネッタより0.2秒遅いというタイムを記録したというがGT-Rに対しては完敗。
ZR-1が登場してはじめて、真の勝負になるだろう。
その速さは先代と比べると、よくも悪くも勢い任せの感は影を潜め、驚くほど緻密にコーナーをクリアする。
意図してアクセルを深く踏み込んでも無秩序なパワーがタイヤをかき乱すような所作はなく、ドライバーの威勢をも勘案した適切なトラクションで確実に前へと進む。
操舵や制動のコントロール性の高さは先代譲りだが、そこでも姿勢を揺らす荒っぽさはまるで感じられない。
なんとも劇的な洗練ぶり。これは、果たしてコルベットなのか? という戸惑いにも似た驚きは、ライバルに触れるとなおさらに際立ってくる。
少なくとも直近に乗った最新の911ターボと比べても、精緻な塊感は比較するに値するレベルだ。
この進化は、コルベットの歴史においても最大級の事件だろう。
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コメント
コメントの使い方やっぱMR化した現行より、この型のコルベットが好き。歴代の良さを継承しつつ飛び抜けてるデザイン。