2020年4月28日、一部改良を果たしたスープラ。その際設定された特別仕様車 RZ“Horizon blue edition”の試乗の様子をお届けする。
一部改良といってもスープラの改良がちょっとやそっとで済むはずがない。3.0Lエンジンの出力は285kW(340馬力→387馬力)にまで引き上げられた。合わせてシャシーも強化、またサスペンションも再チューニングされ、コーナリング中の安定性が高められたという。
“熟成”が大幅に進められた新型スープラRZ(A91型)に、自動車評論家の清水草一氏が試乗した。
【画像ギャラリー】すべてが進化!!! トヨタ GRスープラRZをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年8月のものです
文:清水 草一/写真:ベストカー編集部/撮影:平野 学
初出:『ベストカー』 2020年9月10日号
■猛烈な熟成度!!! スープラ様、トヨタ様に感謝!!!!
スープラRZの2Lターボエンジンが、340馬力から387馬力にパワーアップ! それに併せて車体側も強化された!
実は私、スープラRZは、1年半前、サーキットでプロトタイプに試乗したのみ。以来乗っておりません。だからこそ、1年半の進化と変化がビンビンに感じられた!
スープラは猛烈に熟成され、完成されていたのだ。1年半前はオーバーステアが怖くて怖くて、「これは2代目MR2の再来か!?」くらい思ったけど、今は別物。すばらしいFRスポーツカーだぜ! ルックスは好みじゃないけど!
今回は公道試乗だったので、限界域のことはわかんないけど、怖いクルマって、気配でわかるっしょ。そういう気配は微塵もなかった!
実際乗ると、なにはともあれBMW製直6ターボエンジンのフィーリングがスバラシイ。これぞシルキー6! パワーアップよりも回転の突き抜け感アップが超ステキ!
近年、本家のBMWでは下位モデルからシルキー6がすっかり消えておりますが、久しぶりの駆け抜けるヨロコビ炸裂! うおお~、BMWの6発ってこんなによかったっけ~!?
それでいて、387馬力というのは、公道でもギリギリ真価を味わえるレベルにある。これが500馬力を超えるとさすがにヤバくなり、600、700になるとほぼ無意味に。
個人的には、570馬力のフェラーリ458イタリアまでは、「ヒエ~速すぎる~!」とシビれつつ根性で味わい尽くしたけど、700馬力級になった今のフェラーリはもうムリ。これ以上高い山に登っても無意味だと感じ、ネオクラシックなフェラーリ328GTSに回帰しました。
31年前のフェラーリは、たったの270馬力。「たったの」とは言うものの、公道では充分以上のパワーだし、これくらいなら骨の髄まで味わえて、フニャフニャの骨抜きになるくらい気持ちイイ。
この頃のフェラーリは、操縦性なんてどうでもよくて、カッコよくてエンジンが官能的ならすべて善し。
今乗ると、着座位置の猛烈な低さや室内の狭さなどもあって、想像を絶するウルトラ非日常!
しかし、この30年で世の中はなにもかもが進歩して、安全要件も騒音規制も厳しくなった。さすがにもう30年前みたいな牧歌的なことは言ってられない。その枠の中で非日常の刺激を用意せねばならない。
そのひとつが、ステアリングのシャープさだ。現在のスーパースポーツは、速度を上げれば上げるほどステアリングがシャープになり、コブシ1個分切っただけで横っ飛びする。そういう刺激がないと、スポーツカーに乗る意味がないから!
スープラも、そこはしっかりやっている。速度が上がるにつれてステアリングはシャープさを増し、自由自在になんでもできそうな感覚を味わえる。
サスペンションも、顧客の「もっと非日常を味わいたい」というリクエストに応えて、サーキット寄りにやや固めたというが、公道でもオッケーだけど歯ごたえアリ! みたいな乗り味で、とてもイイと思いました。
スープラRZは、スポーツカーの生き残り策をしっかり実行した、実にいいクルマになっていた。ありがとうトヨタ様! 涙が出ます。
■GRスープラ RZ
・全長×全幅×全高:4380×1865×1290mm
・ホイールベース:2470mm
・車重:1530kg
・エンジン:直6DOHCターボ
・排気量:2997cc
・最高出力:387ps/5800rpm
・最大トルク:51.0kgm/1800~5000rpm
・トランスミッション:8AT
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:前255/35ZR19、後275/35ZR19
・WLTCモード燃費:12.0km/L
・価格:731万3000円
※スープラは全グレードにペダル踏み間違い急発進抑制機能が装着され10万円の「サポカー補助金」がもらえるようになった
コメント
コメントの使い方